2023 Fiscal Year Annual Research Report
エントロピー効果を最大化して巨大カチオンを安定に捕捉する籠状キレート配位子の開発
Project/Area Number |
22K14629
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永田 光知郎 大阪大学, コアファシリティ機構, 技術職員 (10806871)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラジウム / アルカリ土類金属 / クラウンエーテル / アルファ線 / 放射化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに合成した配位子に加えて、新たに14員環2つをリンカーとなるエチレン鎖で結合させたポリアザクラウンエーテル化合物にピコリン酸アームを取り付けた新規配位子LOMeを設計合成した。この配位子を用いてラジウムと同族のバリウムを用いて錯体合成を行った。得られたバリウム錯体について、UV-Vis、1H NMR、13C NMR、FT-IR、EDXなどの分光学的測定ならびに元素分析を行うことでこの錯体の同定を行った。また、単結晶X線結晶構造解析の結果から、研究を開始した当初に想定していた単核錯体は得られず、二核錯体が得られていることが判った。各種解析の結果、この二核錯体の構造はリンカー部分でC2対称芯のある構造を有していることが判った。各金属中心のバリウムイオンにはメタノール分子が2つ、カウンターイオンの過塩素酸イオンが1つ、配位子の一方の14員環にピコリン酸アームが結合した部分の計10配位の歪んだ五角面一冠正三角台塔構造を有している。バリウムから酸素および窒素原子からの結合距離は、それぞれBa-O(Å): 2.789(3)-3.136(3), Ba-N(Å): 2.908(3)-3.025(3)の範囲にあった。この値は既存のバリウム二価錯体の結合長と同様であることから二価錯体であることが判った。このような二核の構造は溶液中、特に水中では単核錯体との平衡関係にあると推定され、実際に錯体の熱力学的安定性が低いことが判った。また、バリウム以外にもストロンチウムやカルシウムを用いて錯体を合成したが、いずれの金属イオンにおいても同様に二核錯体が形成された。この結果を受けて、今後は新たにリンカー部分をシクロヘキサン骨格などのより剛直な骨格へと変更し、バリウムの単核錯体を優先的に形成させる配位子の開発を行う。
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