2023 Fiscal Year Annual Research Report
放射線検出器応答の再現モデル開発に向けた電子飛跡構造解析コードの開発と実験検証
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22K14630
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
平田 悠歩 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (30881057)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子挙動解析 / モンテカルロシミュレーション / 放射線計測 / 消光現象 / 重粒子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、昨年度開発した任意の物質中の電子線の飛跡構造解析が可能な計算機能(ETSART)をPHITS実装した。ETSARTは放射線が物質にエネルギーを付与し、励起電子を生成する過程を計算することができる。そして、放射線検出器のうち蛍光体を用いた検出器の応答をPHITSにより解析した。 蛍光体の放射線による発光は蛍光体中に発生した励起電子の数に比例するため、蛍光体の応答評価には一つの励起電子を生成するのに必要なエネルギー(ε値)が重要な値となる。そこで、まずPHITSでε値を計算した。従来、ε値は蛍光体のバンドギャップエネルギーを用いた一次関数により予測されていたが、計算した結果はバンドギャップエネルギーに対して比線形となった。この理由としてε値が、バンドギャップエネルギー以外にも電子の組成や密度に依存することが考えられる。 次に、蛍光体の粒子線に対する応答を計算により予測した。蛍光体に粒子線を照射するとブラッグピーク近傍で消光する。この消光現象は粒子線により励起電子が高密度で発生したため、蛍光体の発光中心に対して発生した励起電子が飽和したためであると考えられている。そこで、一つの発光中心を含む微小球を発光ドメインとして定義し、蛍光体を発光ドメインで分割した体系をPHITSで構築した。そして、励起電子の発生分布を計算し、励起電子を含む発光ドメインの数が発光量に比例すると仮定することで消光現象を再現した。光刺激蛍光体BaFBr:Euに対して計算を行ったところ、BaFBr:Euの炭素線とヘリウム線に対する応答の再現に成功した。本研究で開発したモデルは、任意の蛍光体検出器における発光効率と消光効率のシミュレーションを実現し、新規蛍光体検出器の開発などに幅広く貢献することが期待できる。
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