2022 Fiscal Year Research-status Report
ICP-MSで読み解く耳石に刻まれた海水魚のSr-90取り込み履歴
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22K14632
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小荒井 一真 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉環境国際共同研究センター, 研究職 (90846297)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Sr-90 / 耳石 / ICP-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はICP-MSのリアクションガスの変更による干渉除去について検討した。従来のICP-MS法では酸素ガス単独の反応によりZrを除去したが、酸素に加えZrやGe、Seにも反応性のあるアンモニアの混合ガスを添加した。その結果、Zr、Geはアンモニアとのクラスターイオンを生成するため、Sr-90測定に干渉しないことがわかった。Seはアンモニアとの反応で中性イオンへと変化することでSr-90測定に干渉するSeOの生成が抑制されたと考えられる。また、Ar由来の干渉もアンモニアガスの添加によって可能となり、Sr-90測定時のBEC、LODを低下させることができた。このようにアンモニアガスの添加により、従来の酸素ガス単独反応に比べ測定干渉を抑えながら微量のSr-90を測定可能な条件を整えた。 また、ICP-MS自体の測定感度を向上するために、メンブレンフィルターを装着した脱溶媒装置を導入した。この脱溶媒装置を用いることで、ICP-MSの標準ネブライザーよりもSrの感度が8倍程度感度を上昇することができた。上記のリアクションガス反応条件を脱溶媒装置と組み合わせることで、高感度なSr-90用のICP-MS分析法が開発できる見通しが立った。現段階でもSr-90と安定Srの同位体比が10-10から10-11オーダーに適用可能な手法であり、1F事故由来のSr-90を検出可能であると考えられる。 また、海水魚の耳石の採取を進めた。定置網漁で採取されたヒラメ、ホウボウなどの海水魚から耳石を採取した。片側の耳石は年齢推定に用い、個体ごとの年齢を明らかにした。もう片方の耳石はSr-90の分布測定用に用いる試料とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析手法の開発や試料採取は予定どおり進んでいる。次年度以降も手法をより高度化することで、耳石中のSr-90分析も可能になると考えられる。ただし、今年度実施予定であった耳石内のSrのLA-ICP-MSによるマッピング測定が、装置の修理が必要であるため次年度に実施することとなり、研究計画に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
脱溶媒装置を用いた検出感度の向上を行う。また、耳石を複数試料に分割しながら溶解する前処理手法を検討し、耳石の内部から外部にかけてのSr-90の取り込み量の変化の観測に向けた技術開発を行う。また、LA-ICP-MSによるマッピング測定により耳石内での安定Srの分布も観測する。
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Causes of Carryover |
今年度に購入を予定していた脱溶媒装置を別財源により購入したことや当初計画では想定していなかった耳石のSr分布を確認するために使用予定のレーザーアブレーション装置の部品交換が必要となったこと等により執行計画を変更したことから次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額は、次年度分研究費と合わせて、レーザーアブレーション装置の交換用部品購入等に係る費用として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] わずかな量の骨に含まれる 90Srをすばやく分析; 誘導結合プラズマ質量分析手法の適用2022
Author(s)
小荒井 一真,松枝 誠,青木 譲,柳澤 華代,寺島 元基,藤原 健壮,木野 康志,岡 壽崇,高橋 温,鈴木 敏彦,清水 良央,千葉 美麗,小坂 健,佐々木 啓一,関根 勉,福本 学,篠田 壽,北村 哲浩,阿部 寛信
Organizer
令和4年度環境創造センター成果報告会
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[Presentation] ICP-MSを用いたSr-90分析法の開発; 耳石のSr-90測定を目指して2022
Author(s)
小荒井 一真,松枝 誠,青木 譲,柳澤 華代,寺島 元基,藤原 健壮,木野 康志,岡 壽崇,高橋 温,鈴木 敏彦,清水 良央,千葉 美麗,小坂 健,佐々木 啓一,関根 勉,福本 学,篠田 壽,北村 哲浩,阿部 寛信
Organizer
QST環境放射能研究ワークショップ「福島に関連する放射性核種の計測技術開発と環境放射線研究の今後の展開」
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