2023 Fiscal Year Research-status Report
クラスター状硫化鉱物結晶の電磁気学的性質の解明を通じた資源量推定法の開発
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22K14634
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
大田 優介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), 研究員 (60909274)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 岩石物理学 / 硫化鉱物 / 比抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度までの実験成果を学術講演会「地球惑星科学連合2023年大会」にて発表した。さらに、シミュレーション用の有限要素法のコード開発をさらに発展させ、岩石内のミクロな構造の再現性の向上を目指した。 岩石が亀裂を複数含む場合にはその間隙に沈殿する硫化鉱物は脈構造を形成する。逆に、岩石が砂岩のような堆積岩構造を取る場合、間隙がランダムかつ均一に分布するため、結果的に沈殿する硫化鉱物も均一となる。このような内部構造の違いに基づく岩石の種別の差、すなわち亀裂性の火山岩か、粒子性の堆積岩かの違いが、硫化鉱物を介した物性の差として優位に現れることを解析することが目的である。これらの基本的なモデル構築法は昨年度までに考案したものだが、本年度ではさらに、実際の火山地域において採取された実験試料に対する物性測定結果および剥片顕微鏡写真観察に基づいた構造再現を組み込むことで、モデルの精度とバリエーションをさらに向上させることができた。 また複数のモデルに対してシミュレーションを実施することが内部構造と物性の相関関係の理解の解像度を高めることから、多数のモデルを生成しシミュレーションを継続して実施した。同時に、計算のリファクタリングと並列化も実施することで、多数のモデルを同時にかつ高速に処理できるよう工夫した。 以上のシミュレーション結果のとりまとめと考察をまとめて論文を執筆、英字学術論文誌へと投稿した。本原稿は現在査読中である。また、岩石試料の実験についても英字論文を執筆し、2024年春季投稿の予定である。いずれも、最終年度に向けアクセプトを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有限要素法シミュレーションが早期に完成したため、一定の成果を挙げるに足る計算モデルのバリエーションが確保できたこと、実験試料が確保できたため、より現実性の高い岩石モデルを構築することができたことが理由として挙げられる。また論文の投稿が完了し、査読が進行中であることに加え、岩石実験の結果を別途詳細に検討し論文として投稿することが決定していることも、計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現状査読中の論文原稿の採択を目指し、成果公表を確実に行う。 次に、2023年度内に実施したFEMのコード開発の課程で新たに浮上した課題としてPoisson-Nernst-Planck(PNP)方程式によるTime Domain Induced Polarization(TDIP)パラメータの抽出が挙げられる。PNP方程式とTDIPパラメータの抽出によって、計算モデルに対し、IPデータの解析に広く用いられるCole-Coleモデル(CCM)の適用が可能になる。 CCMは岩石の複雑なIP効果を最小限のパラメータセットで再現するための効果的な手法であり、本研究が構築した複雑かつ不均質なFEM岩石モデルをCCMまで落とし込むことで、物理探査の精度向上に資する知見が得られる。すなわち、複雑かつ不均質なFEM岩石モデルを一定の法則に従って分類し、分類とCCMの対応関係について研究することで、物理探査データと岩石の内部構造の相関関係についての新たな知見を提供すると考えられる。 以上、本年度は、成果公表を実施すると共に、これまでに構築されたFEMモデルのさらなる精度向上と、PNP方程式の導入を実施し、初歩的な実験を実施する。
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Causes of Carryover |
第一に打ち合わせ・実験設備利用のための旅費が予定よりも減額されたこと(他の用務に併せた軽微な作業の積み重ねによるものである)、第二に英文校正費の費用の見積もりに瑕疵があったこと(予想よりもボリュームの程度の小さい論文を執筆し校正したため、見積もりが安くなったこと)、第三に物品購入の必要が生じなかったことが原因である。 一方、次年度使用額が生じたことにより、今後発生する論文投稿料に余裕ができ、次年度予定に挙げられている新たなるシミュレーションの実施に伴う様々な研究活動に対する予算の有効活用が可能となった。
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Research Products
(1 results)