2022 Fiscal Year Research-status Report
シアノバクテリア時計タンパク質振動子の出力分子機構の理論的解明
Project/Area Number |
22K14652
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
甲田 信一 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10790404)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 体内時計 / 概日リズム / シアノバクテリア / KaiB / 最小エネルギー経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は二つの安定状態をつなぐ最小エネルギー経路を計算的に求める高効率なアルゴリズムを開発した。以下、その概要である。 一般に自然科学における状態変化では、系はエネルギー的に安定な状態から不安定な状態を経て別の安定状態に移り変わる。その時系は極力エネルギーが低い状態を経由しようとする。これは我々が歩いて山を越える時にできるだけ標高の低い峠を通るようなものである。したがって極力エネルギーの低い状態を経る最小エネルギー経路を知ることは重要である。例えば本研究課題で着目しているシアノバクテリアの時計タンパク質KaiBは安定な二つの異なる折り畳み構造を持つが、そのふたつの安定状態がどのような経路で結ばれているかは未だよく理解されていない。 さて計算的に最小エネルギー経路を求める手法はこれまで様々考案されてきたが、より計算量が少ないほうが望ましい。現在広く用いられている手法は系に働く力を修正し、その修正された力が経路上のすべての点でゼロになる経路を探すが、そのゼロ点探索はやや効率が悪い。そこで本研究では最小エネルギー経路探索を等価な最小化問題に書き換え、さらに先端的な最小化問題ソルバを適用した。結果としては、計算の安定性の向上(計算に失敗するケースが減少)および計算効率の顕著な上昇を果たした。この成果については学会(理論化学討論会)にて発表を行った。詳細は近日中に専門誌に投稿する。また今後は、今回開発した手法を用いてKaiBの構造変化などを詳しく調べる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は二つの安定状態を遷移状態を経てつなぐ最小エネルギー経路を計算的に求める高効率なアルゴリズムを開発した。本研究課題で着目しているシアノバクテリアの時計タンパク質KaiBは安定な二つの異なる折り畳み構造を持つが、そのふたつの安定状態がどのような経路で結ばれているかは未だよく理解されていない。今回のアルゴリズム開発はこのような複雑な系への応用を念頭に行った。 現在広く用いられている手法は経路上で計算された系に働く力を修正し、その修正された力がゼロになる経路を探す。しかし、そのゼロ点探索はやや計算効率が悪い。そこで本研究では最小エネルギー経路探索を等価な最小化問題に書き換え、さらに先端的な最小化問題ソルバを適用することで大幅な効率化を実現した。この成果は近日中に専門誌に投稿する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、ミクロスコピックな研究として、分子動力学シミュレーションを用いてKaiBおよびSasAとKaiCの複合体の安定性を見積もる。この際、KaiBの構造変化については開発した最小エネルギー経路探索アルゴリズムを応用したい。一方で、マクロスコピックな研究である反応モデル開発は近く着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
計算機を購入する予定であったが適当なスペックのものが見つからなかったため購入を次年度に先送りすることにした。
|