2023 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン結合スピン転移を基盤とする電場・光応答性多核錯体の開発
Project/Area Number |
22K14658
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中西 匠 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40836425)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロトン移動 / スピン転移 / 水素結合 / ヒドラゾン錯体 / 光応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではプロトン移動とスピン転移が固体中で連動する現象(プロトン結合スピン転移現象)に基づく機能開拓およびプロトン結合スピン転移錯体の分子設計の拡張を目的に、新規配位子を用いた錯体の開発を行った。従来のヒドラゾン部位とピリジン環の窒素原子間で分子内水素結合が形成される配位子に代わり、フェノール基の酸素原子とヒドラゾン部位の窒素原子との間で分子内水素結合を形成する配位子を用いて錯体の合成を行った。フェノール基への置換基の導入によりプロトンドナー/アクセプター部位間のpKa差を調整することで、非常に短い分子内水素結合を形成した中性の鉄二価錯体を開発した。錯体の温度変化および低温における光照射前後での磁性の変化を調べた結果、熱-光誘起スピン転移を発現し、かつ光誘起スピン転移状態が低温下でトラップされることを確認した。さらにこの錯体は高スピン状態でプロトンがヒドラゾン部位に存在するという既報の類似錯体とは異なる特徴を示すことを単結晶X線および中性子回折測定により確認した。スピン転移前後での分子構造の変化を調べた結果、本錯体では分子内の二つのプロトンが移動するダブルプロトン移動を発現する事が明らかとなった。新たに設計した配位子は分子内水素結合を保持したまま二座配位子や四座配位子に設計を拡張できることから、架橋配位子と組み合わせることでプロトン移動能を有する多核錯体の開発に応用できると期待される。
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