2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14664
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安井 孝介 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10877640)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ペンタレン / ビシクロ[3.3.0]オクタンジオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では3 環以上が縮合した非交互炭化水素である縮合多環式非ベンゼン系炭化水素 (polycyclic nonbenzenoid hydrocarbons, PNH) の本質理解を目的として遂行した。その一つとして、反芳香族性に由来する興味深い性質をもつペンタレン骨格を中央にもつ PNH を標的分子とした。これまでにもベンゼンの縮環したペンタレンの合成法は多数報告されてきたものの、縮環構造を多様化するには適合しない合成経路であった。そこで、本研究では縮環部位を容易に多様化できるような合成法の確立に努めた。具体的には、2 つのケトン部位をもつビシクロ[3.3.0]オクタンを出発原料として、合成終盤に縮環し、酸化することでペンタレンへと誘導するという合成計画のもと、研究を遂行した。 始めに用いたジケトンは Weiss ジケトンという名でも知られるビシクロ[3.3.0]オクタン-3,7-ジオンである。このジケトンは対称性が高く、縮環に要する官能基の導入が難航したものの、対角に位置するケトンの α 位に 4 つのフェニルチオ基を導入できることを見出し、その構造的特徴と反応性を報告した。[Eur.J.Org.Chem.2022,e202201029.] Weiss ジケトンでは標的とした分子の合成が難しいと結論付け、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,6-ジオンを用い、再考した合成計画に基づき検討した。その結果、ベンゾチオフェンを始めとするヘテロ環の縮環したペンタレンを合成できた。[投稿準備中]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では縮環部位を容易に多様化できるような合成法の確立に努めた。その結果、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,6-ジオンを出発原料とするペンタレン類の新規合成法を見出すことができた。この合成法から生み出される新しいペンタレン類の物性調査は今後の課題ではあるものの、その基盤となる技術を確立できたことから、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によりペンタレン類の新規合成法を確立することができた。今後はこの合成経路だからこそ合成可能になるペンタレン類の合成とその物性を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本研究で開発した合成経路だからこそ合成可能になるペンタレン類の物性を明らかにするために実験計画を後ろ倒しにした。これにともない生じた次年度使用額はこの物性測定に関連するものに充当する予定である。
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