2022 Fiscal Year Research-status Report
Exploration and Luminescence-Property Control of Organic Polar-Crystal Materials Exhibiting Triboluminescence
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22K14667
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
大垣 拓也 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特任助教 (80804228)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トリボルミネッセンス / メカノルミネッセンス / 摩擦発光 / 極性結晶 / 結晶構造 / 分子間相互作用 / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリボルミネッセンスは、自発分極をもつ極性結晶材料に機械的刺激を加えることにより発光する現象であり、自発光性の刺激応答性材料としての応用が期待されているものの、材料の合理的な設計指針は確立されていない。本研究課題では高効率なトリボルミネッセンスを示す有機極性結晶材料の創出を目的とし、トリボルミネッセンスを示す新規極性結晶材料の探索と、ホスト-ドーパント系有機極性結晶によるトリボルミネッセンス特性の自在制御を目指す。 2022年度は、以下の1)から3)の検討を行った。 1)新規トリボルミネッセンス材料として、分子形状と結晶構造の対称性に注目した材料探索を行った。その結果、材料自体は既知であっても、これまでトリボルミネッセンス特性に関して未検討であったいくつかの有機結晶(有機ホウ素錯体、アントラセン誘導体、トリフェニルアミン誘導体など)が、トリボルミネッセンスを示すことを見出した。 2)ホスト-ドーパント系で構成される有機トリボルミネッセンス極性結晶を開発した。この結晶では、機械的刺激により生成したホストの励起状態から発光性ドーパントへのエネルギー移動を経由して、ドーパントからの発光が得られる。そのため、トリボルミネッセンスを示さないホストとドーパントの組み合わせからでもトリボルミネッセンスの発光色の制御が可能であることを確認した。 3)有機極性結晶の結晶構造モチーフとして「極性層状ヘリンボーン構造」を提案し、その一般性を検証した。その結果、特定の置換基を有する棒状分子において、分子の双極子モーメントの向きを揃えた有機極性結晶が高確率で得られることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)新規トリボルミネッセンス材料を開発した。材料合成、X線結晶構造解析、およびトリボルミネッセンス観測を連続的に行うことができ、当初想定していた以上のペースで新規材料の開発に成功した。 2)ホスト-ドーパント系で構成される有機トリボルミネッセンス極性結晶を調製し、狙い通り非発光性の極性結晶ホストを用いても発光色制御が可能なトリボルミネッセンスが観測できた。 3)有機極性結晶の設計指針となりうる「極性層状ヘリンボーン構造」を一連の分子群で実験的に確認できた。さらに、この材料を極性結晶ホストとして用いたホスト-ドーパント系結晶においても、トリボルミネッセンスが観測できたことから、「極性層状ヘリンボーン構造」がトリボルミネッセンス材料としても応用可能であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)新規トリボルミネッセンス材料の開発として、分子形状と結晶の対称性に注目した材料探索を引き続き実施する。一方、トリボルミネッセンスの観測は定性的な確認だけで行っているため、今後はトリボルミネッセンス評価のための光学系を構築し、定量評価を行う。 2)ホスト-ドーパント系結晶においてもトリボルミネッセンスが観測できたため、これらの固体中での結晶構造や分子配列に関して粉末XRDを用いて評価する。 3)有機極性結晶の設計指針となりうる「極性層状ヘリンボーン構造」を形成するための重要な因子を明らかにする。結晶中の構造を用いた計算化学により、結晶構造を決定する分子構造的特徴や分子間相互作用を明らかにし、有機極性結晶の合理的設計のための分子設計として一般化する。
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Causes of Carryover |
当初導入を検討していたフラッシュ自動精製装置を事前に導入することができたことと、COVID-19の影響で一部の学会がオンライン開催となり旅費が不要になったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、材料合成や構造解析などの実験研究に必要な試薬や物品を拡充する一方、学会や論文での成果発表を積極的に行い予算を使用する計画である。
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