2022 Fiscal Year Research-status Report
光駆動型構造相転移を示す有機分子結晶の創出と形状記憶機能への展開
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22K14668
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
西村 涼 立教大学, 理学部, 助教 (00908634)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / 有機結晶 / 構造相転移 / ジアリールエテン / 形状記憶効果 / 逆フォトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、光応答性有機結晶材料に対して、光照射をすることで、形状記憶効果や超弾性現象を誘起することを目指した研究である。これまで、いくつかの有機超弾性現象の例が報告されてきたが、それらは、機械的刺激、温度による制御が達成されている。それに加えて、我々は、光によってもコントロールできるのでは?と考え、その結晶の実現のため、分子間相互作用を考えた分子設計、合成、結晶作成を行ってきた。また、ジアリールエテンの結晶中での着色反応は結晶の表層のみでしか起こらないことが多い為、結晶全体の構造変化を誘起するのは難しい。そこで、逆フォトクロミズムを示す結晶を作成し、結晶全体が異性化するような系を構築し、その光制御も目指している。 まず、逆フォトクロミズムを示す系については、いくつか合成を行った。溶液中では逆フォトクロミズムを示したものの、単結晶にすると、すべて光異性化を起こさなかった。それらの結晶の単結晶X線構造解析を行うと、反応する原子間の距離が、反応を許容する距離内に位置していなかった。これらの結果を踏まえ、分子設計しなおす必要がある。 また、申請書に記載した、分子間相互作用の強弱を光によって変えることで、構造相転移を引き起こすことを狙った分子に関しては、複数合成しており、それらの結晶を作成している途中段階である。 また、その中の一つが、当初の目的とは異なるが、面白い機械的刺激応答性を示した。この挙動の詳細は既に解析しており、論文化、そして更なる展開も期待できそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子の合成は進んでいるが、目的の機能創出までは至っていない。それらの結果を踏まえ、より適切な分子構造等の設計も進めており、合成、結晶の作成を進めていく。 また、本来の目的とは異なる現象も見出し、そちらの結果をまとめるのに時間をかけたことも、少しの遅れの原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、分子の設計と合成、結晶の作成、解析等を進め、できるだけ多くの化合物から今後の展開に有益な情報を得たいと思っている。 また、分子を合成しても、思った結晶構造になることが少ないため、できるだけ多くの分子を合成していく必要がある。そのため、効率的にたくさんの分子を合成できるような反応スキーム、分子設計を考え、進めていく。
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Causes of Carryover |
差額が0より大きくなったのは、人件費・謝金、及びその他の経費を全く使わなかったことが挙げられる。これは、論文作成時の英文校閲費であったり、論文掲載費として経費を申請していたが、本課題に関する研究成果が論文投稿まで達していなかったことが原因である。その分、最終年度に回し、それらの経費を使用する。 また、物品費に関しては、試薬等がほとんどであるが、ガラス器具や様々なツールを購入しなかったことが挙げられる。それらに関しても、最終年度に購入することになりそうなので、次年度に繰り越した。 それらを合わせて、最終年度は必要になった装置購入等を進めていきたい。
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Research Products
(8 results)