2023 Fiscal Year Annual Research Report
光駆動型構造相転移を示す有機分子結晶の創出と形状記憶機能への展開
Project/Area Number |
22K14668
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
西村 涼 立教大学, 理学部, 助教 (00908634)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 有機結晶 / 光セルフヒーリング効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、光応答性有機結晶材料に対して、光照射をすることで、形状記憶効果や超弾性現象をコントロールすることを目指したものである。 最終年度は、初年度に引き続き、超弾性結晶実現に向けた分子設計、合成、結晶作成を行った。得られた結晶に対して光や機械刺激を与え、反応性を調べたが、どれも超弾性を示さなかった。結晶中での相互作用を考慮した分子設計を行ったが、ハロゲン結合は思うような相互作用を形成せず、カルボキシ基の水素結合は一次元的に伸びた水素結合を形成したが、弾性変形のみしか示さなかった。 一方、作成したこれらの結晶の中から、機械刺激によって弾性・塑性変形を示す光応答性結晶を新たに見出し、光照射によって弾性・塑性⇔脆性間を可逆的にスイッチする事が可能であった。この現象は光照射で結晶に亀裂が入り(脆性化)、可視光照射によって亀裂の回復(弾性・塑性化)による結晶の光セルフヒーリング現象に起因していることを見出した。現象は厳密には本来の目的とは異なるが、柔軟な変形を示す有機結晶という点では、本研究課題を達成できたと言える。 研究期間全体としては、超弾性結晶の発現は達成できなかったが、結晶中での分子間相互作用、相互作用と結晶の柔軟性との関係性に関する知見を得ることが出来た。また、光セルフヒーリング現象による弾性・塑性結晶の柔軟性スイッチングを達成することが出来た。これらの結果は、分子の形と結晶の柔軟性に関する新たな知見を与え、光機能有機結晶材料の新たな機能構築に向けた重要な足掛かりになる。
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