2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14669
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 健太 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 次席研究員(研究院講師) (90897589)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | π共役系 / 湾曲グラフェン / ナノグラフェン / ホウ素化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
三次元的なπ共役系の広がりをもつ湾曲グラフェンは、典型的な平面グラフェンでは発現し得ない数々の性質を示す魅力的な基盤材料である。湾曲グラフェンへのホウ素原子の導入は、電子受容性の付与に留まらず、ホウ素のルイス酸性や配位数の変化を利用した化学吸着能が付与できるため、湾曲グラフェン化学に新地平を開拓できる。そこで本研究ではホウ素ドープ湾曲グラフェン化学の開拓を目指し、ホウ素がドープされた湾曲ナノグラフェンの合成および湾曲構造内に固定化されたホウ素の特異な物性・現象の探索と追及を目指した。 次元に広がるπ共役系を有するグラフェンは、幅広い応用範囲をもつ次世代材料である。このグラフェンにホウ素原子をドープしたホウ素ドープグラフェンは、カルボカチオンと等電子構造である三配位ホウ素の電子欠損性から高い電子受容性や空軌道をもつ三配位ホウ素のルイス酸性を利用した配位数の変化を伴う化学吸着能を発現する。物理学的手法でのホウ素ドープグラフェンの合成では、ホウ素の位置や数は制御できない。そこでホウ素の位置と数が厳密に制御されたホウ素ドープナノグラフェンが、モデル分子として有機化学的にボトムアップ合成され、その反応性や物性が研究されている。ホウ素ドープナノグラフェンの特異な物性の数々はグラフェンに組み込まれた三配位ホウ素が平面構造に強固に固定されていることが鍵である。そこで、ホウ素をドープするグラフェンを非平面化することで、新たな物性や機能の発現が期待できると考えた。 本年度の研究実施計画は、π拡張ボラサーキュレンの合成および物性解明に注力する予定であった。実際には、準備状況で達成していた前駆体の構造が想定と異なっていることが明らかとなったため、年度の途中から、別法での鍵前駆体合成に取り組んだ。新たな合成経路は、以前の合成経路よりも、複雑な合成装置を必要とせず、大スケールでの合成も可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の合成計画から変更はあったが、結果として空気中で安定な化合物を経由する合成経路となり、目的化合物の量的供給が容易になった。従って、総合的にみれば、本研究は当初の計画以上に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、鍵前駆体の合成に続くホウ素ドープ湾曲グラフェンの合成する。 また、NMR、サイクリックボルタンメトリー(CV)、各種光学測定により、合成したホウ素ドープ湾曲ナノグラフェンの基礎物性を測定する。また、単結晶X線構造解析とDFT計算を用いて、分子中心に存在するホウ素を含みかつ湾曲した芳香環の芳香族性を明らかにする。ルイス塩基(フッ化物イオンやピリジンなど)と複合体を形成させた際の応答を吸収スペクトルやNMR測定から、湾曲構造に固定化されたホウ素のルイス酸性度を算出する。また、光照射や温度変化への化学吸着挙動を明らかにする。これらの研究により、ホウ素ドープ湾曲ナノグラフェンの本質的な性質理解を目指す。さらに、湾曲構造とルイス酸性を活かした新たなフラストレイティド・ルイスペア(FLP)としての応用も検討する。
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Causes of Carryover |
実施計画以上に、スムーズに研究が進行した結果、所属研究室に既にある試薬、および、溶媒、ガラス器具などで十分であったため、初年度予算の繰越分が発生した。
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