2022 Fiscal Year Research-status Report
フッ化物イオン共役電子移動を利用した可視光駆動型炭素-フッ素結合の還元反応の開発
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22K14685
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
内倉 達裕 学習院大学, 理学部, 助教 (50867869)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機フッ素化合物 / EDA錯体 / 炭素-フッ素結合活性化 / 光電子移動 / ラジカル付加反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リチウムイオンとフッ素の親和性を利用し、可視光を照射することによって電子移動と脱フッ素化を協奏的に起こすことによる炭素-フッ素結合の官能基化反応を目的としている。なお、電子移動はElectron-Donor-Acceptor(EDA)錯体を経由した光一電子移動を利用する。リチウム塩および塩基の存在下、トリフルオロメチルアレーンと電子豊富アルケンに対し可視光を照射することによって、ジフルオロメチレン化合物が得られることを見出した。すなわち、リチウムイオンとフッ素の相互作用により還元されやすくなったトリフルオロメチル基を有する化合物が、電子供与体とEDA錯体を形成し、そこに可視光を照射することによって、一電子移動、脱フッ素化が協奏的に進行し、ジフルオロメチルラジカルを生じる。このラジカル種をアルケンなどのラジカル受容体で捕捉することによって、ジフルオロメチレン化合物を生成する。反応機構解析によって、本反応はジフルオロメチルラジカルを経由して進行することが確認された。 また、理論化学的手法を用いることによって、一電子移動と脱フッ素化過程は協奏的に進行していることが示唆された。 さらに、アルケンの代わりに水素供与体を用いて同様の条件下反応を行うことによって、ジフルオロメチル基を有する生成物が得られることを見出した。ジフルオロメチル基は、ヒドロキシ基やスルファニル基の生物学的等価体として知られており、医薬品への利用が期待されている。 このように、光一電子移動と脱フッ素化を協奏的に起こすことによるトリフルオロメチル基の炭素-フッ素結合の還元反応を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に示したように、EDA錯体を経由した光一電子移動と脱フッ素化を協奏的に起こすことによるトリフルオロメチル基の炭素-フッ素結合の選択的還元反応を見出し、ジフルオロメチレン化合物を合成することに成功した。また、反応機構解析を行うことで、本反応がジフルオロメチルラジカルを経由したラジカル付加反応であることを示した。本実験結果は、日本化学会第103春季年会で報告し、現在論文作成中である。このように、当初の予定通りに研究が進展している。 また、上記と同様にリチウム塩の条件下、モノフッ化アリールの炭素-フッ素結合の還元が進行することも確認しており、次年度以降検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
EDA錯体を経由した光一電子移動と脱フッ素化を協奏的に起こすことによるトリフルオロメチル基の炭素-フッ素結合の選択的還元反応には既に成功している。今後は、より温和な条件の探索および収率の向上を目指して検討を行う。さらに、基質一般性の拡大および化合物データの収集を行った後に学術論文に投稿する予定である。 また、水素供与体を用いたジフルオロメチル化合物の合成についても、同様に反応収率の向上および基質一般性の拡大を進めていく予定である。 さらに、本反応形式をモノフッ化アリールや、トリフルオロメチルアルケン等の基質へ適用するための検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
基質適用範囲の検討が未だ不十分であり、原料として用いる試薬の購入資金を使用しなかったため。 次年度にこれらの試薬を購入する予定である。
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