2022 Fiscal Year Research-status Report
Divergent synthesis of unsymmetrical polysulfides by the selective activation of sulfur-bonded leaving groups
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22K14687
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金本 和也 東北大学, 薬学研究科, 助教 (90849100)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジスルフィド / 多様性合成 / 脱離基 / アミノ基 / イミド基 / トリフルオロ酢酸 / アリルシラン / 芳香族求電子置換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジスルフィド構造は様々な分野において有用な化合物群であるが,非対称なジスルフィドの合成は難しく,これらを自在に合成できる新たな手法の開発が求められてきた.これに対して,本研究課題では,2種の使い分けて変換できる脱離基として,アミノ基とイミド基を有する新たなジスルフィドプラットフォーム分子を開発し,さらに,これを用いた変換反応も開発することで,多彩な組み合わせの置換基を有するジスルフィドを自在に合成できる基盤を整備することを目指した.検討の結果,脱離基としてモルホルノ基とフタルイミド部位を有する化合物がこのようなプラットフォームとして利用できることを明らかにした.また,このプラットフォーム分子は,TFA(トリフルオロ酢酸)の存在下でアミノ基側のみを選択的に変換することができた.具体的には,アリルシランとの反応によってアリル基を,電子豊富な芳香環との反応でアリール基を,アルキニルシランとの反応によりアルキニル基を導入することに成功した.また,これらの反応の基質適用範囲を明らかにし,これらの反応が多彩な類縁体の合成に幅広く利用できることを示した.また,オルト位に求核的な置換基を有するアルキンを原料として,ベンゾヘテロール環を形成しながらジスルフィド構造を導入する反応が進行する萌芽的な知見を得た.また,これらの反応によって残されたフタルイミド部位の変換反応の開発にも成功し,アミンや,アミノ酸等価体のアズラクトンの導入を行えることが明らかとなった.これらの変換を組み合わせることで,医薬品分子など様々な有用骨格を含む求核部位を,逐次的にジスルフィドプラットフォームに導入し,多彩な組み合わせの複雑な構造を両側に有する様々なジスルフィドを簡便に合成できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
検討の結果,脱離基としてモルホルノ基とフタルイミド部位を有する化合物がジスルフィドプラットフォームとして利用できることを明らかにした.本試薬は,これまでに報告された試薬と異なり,空気中,室温でも安定な取り扱いやすい固体で,硫黄に特徴的な悪臭も伴わないことがわかった.この分子は酸の存在下ではアミノ基側がプロトン化されて活性化されるため,アミノ基側のみで反応が進行し,中性・塩基性条件下では,電子不足なイミド基側が変換されることが明らかとなった.具体的には,TFA(トリフルオロ酢酸)の存在下で,アリルシランとの反応によってアリル基を,電子豊富な芳香環との反応でアリール基を,アルキニルシランとの反応によりアルキニル基を導入することに成功した.また,これらの反応の基質適用範囲を明らかにし,これらの反応が多彩な類縁体の合成に幅広く利用できることを示した.また,オルト位に求核的な置換基を有するアルキンを原料として,ベンゾヘテロール環を形成しながらジスルフィド構造を導入する反応が進行する萌芽的な知見を得た.また,これらの反応によって残されたフタルイミド部位の変換反応の開発にも成功し,アミンや,アミノ酸等価体のアズラクトンの導入を行えることが明らかとなった.加えて,メタノール中で反応を行う場合には,イミド基がメトキシ基に置き換わるためか異なる反応性を示し,塩基性条件でナフトール誘導体にジスルフィド構造を導入できることを明らかにした.さらに,これらの変換を組み合わせることで,医薬品分子など様々な有用骨格を含む求核部位を,逐次的にジスルフィドプラットフォームに導入し,多彩な組み合わせの複雑な構造を両側に有する様々なジスルフィドを簡便に合成できることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず,現時点で反応進行の萌芽的な知見を得ている,オルト位に求核的な置換基を有するアルキンを原料としてベンゾヘテロール環を形成しながらジスルフィド構造を導入する反応について,反応条件を精査したのちに,基質適用範囲を調べる.また,ベンゾヘテロール類は医薬品などにおいて有用な構造であることから,これらの構造を含むジスルフィドの合成に取り組む.さらに,イミド基側の変換反応として,アミノ化反応やアズラクトンとの反応について基質適用範囲を明らかにする.さらに,アズラクトンの反応においては,ペプチド型アズラクトンの利用やペプチドによるアズラクトン環の開裂などによって,ペプチドの末端および内部にジスルフィド構造を導入する手法の確立を目指す.メタノール中でのナフトールのジスルフィド化反応についても引き続き検討を行う.また,より高度な課題として,ジスルフィドプラットフォーム分子の改良にも取り組む.具体的には,アミノ基やイミド基の構造をチューニングし,より選択性や反応性が高まる分子へと磨き上げる.また,これらの類縁体を利用したラジカル的な反応など,発展的な課題にも一部取り組む.
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Causes of Carryover |
研究計画は順調に進んでいるが,当初の予定と比較して低温反応を用いることなく目的の変換(アズラクトンやアミンの導入反応など)を行うことができたため,既に購入済みの機器で対応することができた.代わりに,2023年度には,合成した化合物の単離精製に使用するUV検出装置のほか,ジスルフィドへのペプチド導入等の反応開発に使用する試薬の購入に充てる予定である.
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Research Products
(16 results)