2022 Fiscal Year Research-status Report
ポリオキソメタレートと酵素を融合した環境調和型触媒の開発
Project/Area Number |
22K14693
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
湊 拓生 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (50902475)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポリオキソメタレート / 電子伝達体 / 酵素 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
極めて高い光学純度を要する不斉合成や多電子酸化還元を伴う安定有機化合物の官能基変換などの高難度触媒反応は医薬品合成や環境問題解決における鍵反応である。電子伝達体依存型酵素はこれらの反応を可能とする一方で、量論量の廃棄物生成や収率の低下が問題となっていた。そこで申請者は酸素や水素を用いて電子伝達体の酸化還元再生ができれば、廃棄物が水のみで原子効率が高い触媒システムの構築が可能であると考えた。本研究では、タンパク質との親和性が高く原子レベルでの構造制御が可能な分子状金属酸化物クラスター (POM)に着目し、高度に設計されたPOM触媒と酵素を複合化させることにより、従来の欠点を克服した新規環境調和型触媒の開発を行う。 POMを用いた触媒合成においては、新規異種金属多核構造構築法の開発も行い3種14核もの巨大な異種金属多核コアを有する構造を最終生成物の構造予測が可能な逐次的手法によって合成することができた。今後は、現在進めている細胞からの酵素単離、生化学的・構造学的分析や、異種金属多核構造の酸化還元特性・触媒特性の分析を引き続き行い、酵素とPOM触媒を融合させた高活性な環境調和型触媒の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多電子的な酸化還元反応が可能な新規触媒の合成を行ったところ、従来多核化が困難であった異種金属多核構造含有ポリオキソメタレートにおいて、2つの異種金属多核構造が縮合した{MMn4Ln}Mn4{MMn4Ln} (M = Fe, Mn; Ln = Gd, Tb, Dy, Lu)や{MMn4Ce}Cen{MMn4Ce} (n = 1, 2)といった新規構造の合成に成功した。これらの構造はこれまでに報告されている異種金属多核構造含有ポリオキソメタレートの中で最大核数を有することから、これまでにない多電子的酸化還元特性が期待される。 さらにグラム陰性細菌の培養を行い回収細胞を用いた水素酸化特性評価を行ったところ、二酸化炭素存在下ギ酸が効率よく生成することが明らかとなった。ゲノム解析を行ったところ水素とギ酸の代謝に関する8つの遺伝子(3つのHyd-1,2,3、2つのFDH-H、2つのFDH-N,1つのFDH-O)を特定し、Escherichia coliの遺伝子と高い相同性があることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は異種金属多核構造含有POMの酸化還元特性解明や細胞を超音波破砕することで可溶性画分と膜画分に分離し活性測定することをまず目標とする。そのうえで、タンパク質単離技術と精密無機合成技術を融合させることによって、水素や酸素を還元剤/酸化剤とした廃棄物が水のみの高難度触媒反応達成を目指す。
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