2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒト尿メタボロミクスのための古典的溶媒消去パルスを高度利用したqNMRの開発
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22K14710
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
斎藤 直樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (00635823)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プレサチュレーション / デュアル照射 / faraway water / NOESY / 位相回し / 展開時間 / 混合時間 / 観測中心 |
Outline of Annual Research Achievements |
考案した古典的プレサチュレーションパルス(以下、presat)のデュアル照射法は、高い定量性を有するものの、H2O測定溶液中でプローブコイル中心から離れたfaraway water由来のブロードなシグナルを十分に抑制できないことがわかった。そこで本年度は、faraway waterシグナルを抑制できる代表的な水消し手法のNOESY-presat法の定量性評価を行った。NOESY-presat法にpresatデュアル照射法の概念を将来応用すれば、定量性を確保しつつ、かつfaraway waterシグナルを抑制できるqNMR用手法を構築できる可能性を考えたためである。NOESY-presat法はpresatに加えて、位相回しを伴う3つの90°パルスから構成されるため、NOESYブロックのパラメータが濃度測定値に与えるバイアスを調べた(presatなしで測定可能な各種アミノ酸のD2O溶液利用)。その結果、90°パルス間の遅延時間(展開時間、混合時間)の設定によって、得られる濃度測定値に最大54 %のバイアスが生じた。展開時間、混合時間を0秒に設定しても、最大3 %のバイアスが残ることがわかった。このバイアスは、観測中心を分析対象成分と内標準物質のシグナル同士の中点に設定すると解消でき、オフレゾナンス効果に起因すると考えられる。ここで得た知見を踏まえて、アミノ酸等を溶解したH2O/D2O(90/10 vol%)溶液にNOESY-presat法を適用したところ、得られる濃度測定値に最大26 %のバイアスが生じた。この主要因は、SN比向上のために必要な比較的強いpresat照射であることがわかった。Presat照射によるバイアスは、そのデュアル照射の実行によって大きく低減できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
考案したpresatデュアル照射法の課題を明らかにし、その解決に向けた基礎的検討を開始できたためである。さらに、学会発表など成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プローブ等が異なるNMR装置間で、NOESY-presat法等による水消しの性能が異なる可能性があることがわかってきた。そこで、今後は装置間でのNOESY-presat法等の性能比較等を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、高額なヒト尿標準物質を用いたpresatデュアル照射法の妥当性確認試験を行うことを予定していたが、本法に解決すべき課題があることがわかった。そこで、更なる手法改良に向けた基礎的検討を実施することとし、上記標準物質等の調達は行わなかった。次年度、残額は「今後の研究の推進方策」で上述した検討に支出すると共に、今まで得られた成果の学会発表および論文投稿等に支出する予定である。
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