2022 Fiscal Year Research-status Report
高温高圧水雰囲気下でのグルタミン酸から生分解性プラスチック原料への変換
Project/Area Number |
22K14718
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
近藤 永樹 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 工業試験場, 主査 (30884770)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グルタミン酸 / 2-ピロリドン / 高温高圧水 / 生分解性プラスチック / バイオマスプラスチック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、水素加圧および触媒を必要としない水のみを反応場として活用し、石油由来ではない天然・未利用資源を使った原料から生分解性プラスチック原料へ変換するプロセスを設計する研究である。 グルタミン酸は天然物から回収が可能であり、還元反応によりポリアミド4の原料となる2-ピロリドンへ変換が可能であるため、高温高圧水を利用したグルタミン酸から2-ピロリドンへの変換反応について検討を行った。 天然物から合成可能なピログルタミン酸を原料として、高温高圧水条件で回分式反応器を用い、生分解性プラスチックのポリアミド4製造の原料となる2-ピロリドンの合成を検討した結果、高温条件下で2-ピロリドンを高収率で得ることができた。また、グルタミン酸から2-ピロリドンへの推定反応経路は、水素雰囲気下、貴金属触媒使用時では、水素化脱水反応によりピログルタミノールを経て2-ピロリドンが生成する一方で、触媒を用いない高温高圧水条件では、水素化反応の際に生成する中間生成物(ピログルタミノール)を得ることなく、2-ピロリドンが合成された。そのため、脱炭酸反応により一段階で2-ピロリドンが生成する経路の存在が示唆された。 新たに設計した高温高圧水マイクロ化学プロセスを用い、条件の最適化を進めた結果、回分反応と同様に、高温条件下で2-ピロリドンが得られた。また、超臨界水(374℃、22.1 MPa)となる条件で2-ピロリドンの収率が向上した。22.1 MPa条件では、より高温下である方が収率が向上した一方で、400℃条件で圧力変化の影響を調べた結果、圧力条件には極値が存在し、圧力を単純に増加させるだけでは、収率は向上しないことがわかった。各高温高圧条件における水の密度変化等の影響を受けているものと推定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書で示した本研究の目的は、水素加圧による還元雰囲気下での反応に代わり、安全・安価かつ枯渇しない資源である水を反応場に用いた超臨界・亜臨界水反応を適用した反応場で、石油由来ではない天然・未利用資源を使った原料から生分解性プラスチック原料へ変換するプロセスを設計することであった。 水素ガス加圧による水素添加をせずにグルタミン酸から2-ピロリドンを合成することが要点と考えていたが、それに対し、高温高圧水を用いた400℃、22 MPaの回分反応条件で変換反応を進行させることに成功した。 今後、高温高圧水マイクロ化学プロセスを利用した検討が必要であるが、いずれも基礎となる検討は進められている。以上より、今後の研究を推進方策に従い検討可能な進捗状況であるため、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
以下を基準にして、研究を進める。その際、研究の発展継続性を考慮し、実用化の可能性が高いプロセス構築を優先する。 (1)高温高圧水(流通反応)の検討:高温高圧水マイクロ化学プロセスを用い、変換反応を実施する。 (2)反応条件の検討:反応条件について検討し、変換反応の高効率化を図る。特に、高温高圧水マイクロ化学プロセスの適応可能性について検討する。また、反応原料としてグルタミン酸を用い、2-ピロリドンがワンポットで合成できるか確認する。
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