2023 Fiscal Year Annual Research Report
環状トポロジーの導入により標的への結合力を高めた生体模倣高分子の精密設計
Project/Area Number |
22K14728
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長尾 匡憲 九州大学, 工学研究院, 助教 (40904008)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環状高分子 / 糖鎖 / 運動性 / 分子間相互作用 / リビング重合 / 合成高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、前年度までで合成した環状構造の糖鎖高分子と標的タンパク質との相互作用を評価した。ガラクトースを側鎖にもつ糖鎖高分子を合成し、線形構造のものとそれを環状構造にしたものを実験に用いた。まず最初の標的にはコレラ毒素Bサブユニット (CTB) を設定し、ELISA法による評価を試みた。CTBの天然リガンドであるGM1をプレート底に固定してELISAを行った。しかしながら作製した高分子とCTBの相互作用がGM1とCTBの相互作用に比べて非常に弱かったためか、線形構造も環状構造もどちらも結合したシグナルが得られなかった。CTBを用いたELISAでは高分子構造の影響をたしかめることは困難と判断し、標的タンパク質をピーナッツアグルチニン (PNA) とした赤血球凝集阻害試験を行うことにした。結果として、線形構造の糖鎖高分子の方が環状の構造よりも強い相互作用を示した。これは予想に反するものだったが、追加で高分子主鎖とガラクトースの間をつなぐリンカー構造の長さを変えて実験を行った。その結果、リンカー構造は短く糖側鎖の運動性が低い方が結合には有利であり、逆に高分子の主鎖は運動性の高い線形構造の方が有利であるという結論が得られた。 研究期間全体を通し、まずリビングラジカル重合を用いることで糖鎖をもつ環状高分子の合成を達成した。精製操作によって純度の高い環状高分子が得た。その物性を示差走査熱量系やNMRの緩和時間により評価すると、環化することでその分子運動性は低下した。相互作用を評価すると、主鎖の環化により分子間相互作用は弱くなったが、側鎖の運動性は低い方が望ましいという結果が得られた。本研究は高分子の局所的な運動性が分子認識という機能に影響することを示し、合成高分子のナノマテリアルとしての発展に寄与した。研究成果は主に2報の国際論文として発表された。
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