2023 Fiscal Year Research-status Report
ゆらぎが精密に制御された高分子ゲル網目による分子クラウディング環境の創製
Project/Area Number |
22K14730
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
呉羽 拓真 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60836039)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高分子 / ゲル / 動的光散乱法 / 拡散係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、密度とゆらぎを制御した生体適合性ゲル網目の開発およびゲル網目と、その内部の生体分子の運動・相互作用を厳密に評価できる手法を確立することで、生体分子が高活性化可能なゲル網目の構造最適化と生体現象の発現を目指している。本年度は、生体適合性ゲルの合成条件の精査とゲル網目内部の分子運動評価をメインに進めた。 具体的には側鎖にエチレングリコール基を有し、高い生体適合性を示す高分子であるポリオリゴエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(pOEGMA)を対象に、ゲル化条件を明らかにした。pOEGMA鎖は側鎖のエチレングリコール数を変えることで側鎖長が変わるため、ゲル網目の密度などを制御すること ができる。しかし、pOEGMAのゲル化条件やゲル化後の物性は不明確であるため、ゲル化条件を調査した。従来ゲル化に重要な架橋剤やモノマー濃度に加え、側鎖長に依存して、ゲル化閾値や挙動が異なることがわかった。特に、エチレングリコール側鎖からラジカルが生成し、重合反応が進行することでゲル化のしやすさやゲル網目の架橋密度に影響することもわかり、精密制御において重要な知見となった。これら研究内容の一部は学術論文として投稿中である。 また、合成したpOEGMAゲル網目内部にプローブとして微粒子を内包させ、動的光散乱法(DLS)によりプローブ粒子の拡散を定量することでゲル網目が分子の運動性に与える効果を評価した。側鎖長が異なるゲル網目において、プローブ粒子の拡散係数は側鎖長に伴い減少し、分子拡散に影響することを確かめた。さらに、昇温によりプローブ粒子の拡散性が増加することも確かめ、分子運動の制御因子として有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで研究目的の一つであるゲル網目の精密制御として、高分子側鎖に注目し、ゲル化条件の精査やゲル網目の物性評価を重点的に実施し、側鎖長がゲル網目に与える影響を明らかにすることができた。特に、ゲル化条件を解明でき、学術論文として投稿中であることから概ね順調に進展していると判断した。また、動的光散乱法による内包分子の運動性評価も進んでおり、まとまった結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、内包分子をタンパク質や細胞といった生体分子を対象に、ゲル網目上で動態を評価する予定である。現在、細胞の吸着や生存率の評価を実施中であり、実験条件を確立したのちに光散乱法を駆使し、ゲル網目の構造物性が生体分子の運動性に与える影響を明らかにする。
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