2022 Fiscal Year Research-status Report
高アスペクト比を有するポリイオンコンプレックスベシクルの創製
Project/Area Number |
22K14735
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 聖矢 京都大学, 工学研究科, 特定助教 (30824007)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ペプチド / ベシクル / タンパク質輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでPICsomeを植物への酵素輸送キャリアとして応用を行ってきた。近年、球状よりもアスペクト比の高いロッドやチューブ状 集合体の方が植物への輸送効率に優れていることが報告された。 そこで、本研究では植物への高効率な酵素輸送を目指して、半透性を有するアスペクト比の高いベシクル状集合体の構築を検討した。チューブ 集合体形成促進のためにトリグリシン(Gly3)配列を導入したPIC形成ペプチドを合成し、それらを集合させることで、アスペクト比の高い新規PICsomeの構築する。 これまで、種々のペプチドをベシクル形成に用いて来た。その中でも最近、オリゴサルコシン鎖を有する12 残基のリジンの側鎖をカルボキシル化すると、低濃度で100nm程度のベシクルを形成することを見出している。そこで、本年度は、PICsomeを形成することを見出したペプチド配列Mal-Sar4-K(COOH)12にGly3を付与したペプチドMal-Sar4-K(COOH)12GGGの合成に取り組んだ。ペプチドのN末端側には種々の機能性ペプチドを就職できるように、これまで通りチオールと反応することが知られているマレイミド基を付与した。そのため、トリグリシン配列はペプチドのC末端に付与した。このペプチドを固相合成法によって合成した。その後、MALDI-TOF-MSによって、目的のペプチドが合成できていることを確認した。これを逆相HPLCによって、精製した。収率は良好であった。次に、側鎖をカルボキシ基に変換する前に、このペプチドの二次構造を調べるために、ペプチド水溶液を調製し、円二色性スペクトルを測定した。その結果、ペプチドは水中でランダムコイル構造を形成していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、設計したペプチド配列Mal-Sar4-K(COOH)12にGly3を付与したペプチドMal-Sar4-K(COOH)12GGGの前駆体Mal-Sar4-K12GGGの合成に成功し、良好な収率で得られたためである。このペプチドは2級アミノ酸であるサルコシンを繰り返し合成するため、不純物が形成しやすく、収率が低くなることが考えられた。そのため、サルコシンをダブルカップリングすることで、収率の低下を防げた。また、β-Sheet形成配列を有するペプチドは、そのオリゴマー化のために精製が困難になることが知られているが、K12配列を用いたことで、側鎖間の静電反発のためにオリゴマー化が防止され、容易に精製可能であった。このことから、今後、様々なβ構造形成配列を付与したペプチドを合成する予定であり、そのための合成法の確率に成功したと考えられる。CDスペクトルにより、二次構造はランダムコイル構造を形成していることが明らかとなった。これも側鎖の静電反発によると考えられる。このことから、PICsomeを形成する際に、静電反発力が低下し、部分的なβ-sheet構造の形成が期待される結果であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、この合成したMal-Sar4-K12GGGに無水コハク酸を反応させることで、側鎖のカルボキシ化を行う。カルボキシ化に成功すれば、K12と混合することで、ベシクルを形成することを確認する。この混合溶液の動的光散乱(DLS)測定により、集合体の形成を確認する。また、チューブ状の集合体が形成していることを確認するために透過型電子顕微鏡(TEM)および電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)観察を行う。小角X線散乱(SAXS)によりチューブ状集合体であること確認する。チューブ状集合体が形成しない場合には、水素結合形成配列の最適化を行う。構築した集合体が酵素を内包可能であることと半透性を有することを確認するために、モデル酵素としてカナマイシン耐性酵素(NPTII)を用いる。酵素存在下でチューブ状集合体を形成させる。その後、ベシクル形成ペプチドを添加し、酵素を集合体に封入する。内包されなかった酵素は透析により除去を行い、蛍光相関分光法(FCS)および電気泳動により内包率を算出する。内包されていれば、ベシクル内部のカナマイシンのin vitroでの活性評価をADPの定量によりを行う。植物内へ導入するために、集合体表面に存在するマレイミド基にマイケル付加反応によりシステインを有する細胞膜透過性ペプチドを修飾する。NPTⅡを内包した集合体の植物に導入は減圧加圧法により導入する。植物内への導入の確認は共焦点レーザー顕微鏡による観察により行う。導入効率の評価は、抗生物質カナマイシンを用いた成長阻害実験により行う。NPTⅡの導入効率が高くなれば、より植物が成長阻害を受けにくくなると考えられる。球状集合体と成長率を比較し、導入効率の上昇を確認する。また、集合体の細胞毒性はEvans blueアッセイによって評価する。
|
Causes of Carryover |
今年度、ペプチドの合成を行っており、学会発表するほどの結果得られなかった。そのために、旅費を使用しなかった金額に差が生じたためである。
|