2022 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリンと希土類の配位高分子による光線力学ナノセラノスティクス材料の創成
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22K14741
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
庄司 淳 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (80779075)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 希土類錯体 / 配位高分子 / 超分子 / 近赤外発光 / 一重項酸素 / エネルギー移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポルフィリン色素と発光性錯体(Yb3+)および無蛍光性錯体(Lu3+)を精密に配列することで、近赤外発光(光線力学診断:PDD)と一重項酸素生成(光線力学療法:PDT)を両立する光機能材料の構築することを目的としている。希土類錯体と配位結合するホスフィンオキシド基を複数有するポルフィリン誘導体を合成し、これらを配位子として希土類錯体と錯形成させることで種々の配位化合物を得ることに成功した。単結晶X線構造解析などの構造評価によって、得られた配位化合物はポルフィリン配位子と希土類錯体が交互に配列した一次元の配位高分子や、ポルフィリン配位子が希土類錯体で架橋されたカゴ状の超分子を形成していることが明らかになった。これらの構造はポルフィリン骨格に導入されたホスフィンオキシド基の位置や数によって構造の制御が可能であると考えられる。また、これらの配位化合物において、ポルフィリンは光増感剤として機能し、ポルフィリン部分の光吸収帯を光励起すると、その励起エネルギーがYb3+にエネルギー移動し、近赤外発光を示すことが明らかになった。この近赤外発光は酸素に依存して、その発光強度が変化する挙動も確認された。酸素存在下において、一重項酸素に由来する発光も観測されたことから、ポルフィリンの光励起エネルギーが部分的に一重項酸素の生成に利用されることがわかった。近赤外発光と一重項酸素生成を同時に行うセラノスティクス材料への利用に期待できる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリフィリン骨格に希土類錯体への配位部位として、メソ位にホスフィンオキシド基を2つもしくは4つを導入した配位子を合成した。合成したポルフィリン配位子と希土類錯体を錯形成させることで、単結晶を得ることができた。単結晶X線構造解析から、ポルフィリン配位子と希土類錯体が一次元に交互配列した配位高分子や、ポルフィリン配位子と希土類錯体がカゴ状に配列した分子が得られることがわかった。近赤外発光性のイッテルビウム(Yb3+)錯体とポルフィリン配位子から構成される配位化合物は、ポルフィリンの光吸収帯を励起するとYb3+に由来する近赤外発光を示したことから、ポルフィリン部位が光増感剤として機能していることがわかった。また、ポルフィリン部を光励起することで、一重項酸素に由来した発光も検出することができた。近赤外発光と一重項酸素を同時に行うセラノスティクス材料の構築が期待できる結果が得られた。そのため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はホスフィンオキシド基を有するポルフィリン配位子を用いることで、希土類配位高分子やカゴ状分子を合成し、それらの近赤外発光と一重項酸素生成の機能を見出すことができた。2年目はポルフィリン配位子の周辺置換基や中心への金属イオン挿入などをさらに検討することで、ポルフィリン配位子の物性を検討する。これらのポルフィリン配位子と希土類錯体との配位化合物を合成し、それらの構造と光物性を評価する。また、ポルフィリン配位子と希土類錯体から構成される配位化合物に対し、両親媒性分子を複合化させることで水中に分散する。最適な両親媒性分子を探索・合成し、水溶液中での超分子構造・ナノ構造ならびに近赤外発光挙動と一重項酸素生成挙動を検討する。
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Research Products
(14 results)