2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of structural diversity derived from water molecule network in porous cement mineral
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22K14750
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山根 崚 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10884497)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | X線異常散乱 / エトリンガイト / PDF解析 / 脱水 / 含水鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
エトリンガイト(Ca6Al2(SO4)3(OH)12・26H2O)はセメントの水和反応でできる多孔性の鉱物である。近年、合成の容易さとイオン交換能から有害成分の除去剤として注目され、ゲストの分子・分子アニオン(以降、まとめて分子と呼ぶ)の取り込みに関して更なる研究が期待される。本研究では、この鉱物の40 wt%がホスト構造に水和した水分子で、通常、多孔体がゲストとして含む“水”と比べ特異的な存在様式を持つ点に着目し、それらが脱水する際に引き起こす“結晶性の崩壊”のメカニズムの詳細の解明に着手した。この“結晶性の崩壊”はセメント膨張剤として用いられるエトリンガイトの遅延生成によるセメントのひび割れに影響を及ぼすと考えられている。 これまで、ブラッグピークを示さなくなった試料に対してはX線回折測定が行えず、構造研究が進んでいなかったが、本研究ではX線異常散乱を利用したrdf解析により、“結晶性の崩壊”に伴う短距離・中距離の秩序構造の変化を調べた。ここで、エトリンガイトは比較的軽い元素からなるので、X線異常散乱においてrdf解析に必要な程度のQを確保した実験ができない。そこで、本研究ではAlをGaに置換したGa-エトリンガイトをアナログ物質としてGaのK吸収端近傍におけるX線異常散乱を行った。その結果、300 ℃まで熱した試料についても6 Åまでの範囲で、Ga-X(X = Ca, Ga, S, O)相関はエトリンガイトの結晶構造と一致することが判明した。このことはGa-エトリンガイトの骨格構造であるCa-Ga-O1Dロッドのモジュールは300 ℃まで熱しても秩序的に配列していることを意味している。また、含水鉄リン酸塩(藍鉄鉱)においても、水和された2Dモジュール構造が保たれたまま同様の“結晶性の崩壊”を示すことも突き止めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の一つの目標であるエトリンガイトの“結晶性の崩壊”について、300 ℃まで1Dロッドモジュールが残存しているという成果が得られた。この研究ではAlをGa置換したアナログ合成物質を用いている。この結果のほかにも、Ga-エトリンガイトの熱重量測定やリートベルト法を用いた粉末X線構造解析などの基礎的な物性・構造データの取得も進めているため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず(Al, Ga-)エトリンガイトのMoやAg線源を用いたhigh-QのX線散乱のデータを取得し、そのrdf解析により、Al, Gaの元素により構造変化の差異がないことを調べたい。また、(Al, Ga-)エトリンガイトのCaの吸収端のXAFS測定も実施する予定で、多角的に脱水に伴う短距離・中距離の秩序構造の変化を調べる。また、本課題で着目している“結晶性の崩壊”について、同様の現象を示す含水鉄リン酸塩(藍鉄鉱)において高温その場単結晶X線回折で対称性の低下が確認された。そこで、エトリンガイトにおいても高温その場単結晶X線回折実験を行いたい。また、本研究ではエトリンガイトの基本物性に関しても調べることをテーマとしているため、今後は誘電率・電気伝導率のデータも取得したい。また、水分子が関与した構造変化の研究では、中性子回折実験も有効でありそれに向けた重水素化したエトリンガイト合成にも着手する。
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Causes of Carryover |
2,330円の細かいお金で備品購入などに充てることができず次年度に繰り越した。 次年度の備品購入として使う。
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