2023 Fiscal Year Research-status Report
ロジウム二核錯体と光増感剤を基盤とした超分子多核金属錯体による水の光還元反応
Project/Area Number |
22K14765
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
矢野 なつみ 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (80845587)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ロジウム錯体 / 超分子錯体 / 人工光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水の光還元反応の反応律速の1つである「光増感剤から水素発生触媒への電子移動効率」を向上させることを目的として、電気化学的水素発生反応および水の光還元反応において超高効率な水素発生を行うアンカー型ロジウム二核錯体と光増感剤を単一分子内に有する超分子錯体の開発と、超分子錯体触媒による水の光還元反応を実施している。 本年度は、アンカー型ロジウム二核錯体に対して、(1)軸位と(2)エクアトリアル位からシクロメタレート型イリジウム錯体が配位する系を開発した。(1)では水の光還元反応を実施し、比較としてロジウム二核骨格の軸位にイリジウム錯体が配位しない系と比較した。その結果、ロジウム二核骨格の軸位にイリジウム錯体が配位しない場合では、測定開始5時間後には水素発生量が横ばいになったが、配位する場合では長時間水素発生が持続する結果が得られた。シクロメタレート型イリジウム錯体がロジウム二核錯体の軸位に配位しない場合、アンカー型ロジウム二核錯体への衝突が反応律速となり、イリジウム錯体の崩壊の原因となる一電子還元種の再励起が起こりやすくなるためであると考えられる。これらの結果は、アンカー型ロジウム二核錯体とシクロメタレート型イリジウム錯体を連結した系の方が、電子移動効率が向上することを示唆している。 (2)では、アンカー型ロジウム二核錯体に対して配位活性部位を有するシクロメタレート型イリジウム錯体を合成後、アンカー型ロジウム二核錯体とシクロメタレート型イリジウム錯体が共有結合で連結した超分子錯体を開発し、2年目の目標であった「2分子の光増感剤を有する超分子錯体」の合成法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は上述の通り、アンカー型ロジウム二核錯体の(1)軸位と(2)エクアトリアル位からシクロメタレート型イリジウム錯体が配位する超分子錯体を開発した。 (1)では、配位不飽和なピリジン部位を有するシクロメタレート型イリジウム錯体[Ir(ppy)2(pytpy)]+ (pytpy = 4'-pyridyl-2,2';6',2''-terpyridine)を開発し、アンカー型ロジウム二核錯体に対して軸位から配位する反応システム系を開発し、水の光還元反応を実施した。この系では、アンカー型ロジウム二核錯体の軸位にシクロメタレート型イリジウム錯体{[Ir(ppy)2(pytpy)]+ (phtpy = 4'-phenyl-2,2';6',2''-terpyridine)}が配位しない系よりも長時間水素発生を行うことができることを確認し、電子移動効率が向上していることが示唆された。 (2)では、ロジウム二核骨格のエクアトリアル位に配位可能な部位を有するシクロメタレート型イリジウム錯体を合成し、NMRによって同定を行なった。また、同イリジウム錯体の単結晶を作製し、単結晶X線構造解析によって分子構造を決定した。更には、令和5年度に予定していた2分子のシクロメタレート型イリジウム錯体を有する超分子錯体の開発に成功し、NMRによって同定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4・5年度でアミノ基などの連結部位を有するアンカー型ロジウム錯体及びシクロメタレート型イリジウム錯体の開発と、ロジウム錯体とイリジウム錯体を連結させる技術を確立させることができた。最終年度では、これらの技術を発展させ、2種類の光増感剤を有する超分子錯体の開発と、超分子錯体触媒による水の光還元反応の調査も進める。
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