2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14770
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山口 友一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 嘱託特別講師 (30843122)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水分解 / 準安定相 / 急冷処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体光触媒を用いた水分解によるソーラー水素製造は,資源・エネルギー・環境問題を解決するための重要な研究課題である。本技術の実用化のためには,高活性な水分解光触媒の開発が求められている。光触媒の高活性化には,「バンドギャップの狭窄化」および「光励起キャリヤの再結合の抑制」が不可欠である。申請者は,光触媒の結晶構造の歪みの解消がこれらの要素に対して優位に働く可能性があることに着目した。歪みの少ない準安定相を有する新規水分解光触媒を開発し,水分解の高活性化を目指すことが本研究の目的である。当該年度では,モデル光触媒として,ペロブスカイト型の結晶構造を有するNaTaO3およびAgTaO3を用いた。これらの酸化物は高温下でCubic相を有することが報告されている。そこで,Cubic相を有するNaTaO3およびAgTaO3光触媒を合成することを目指した。固相合成後の両サンプルを高温下の電気炉から取り出し,直ちに液体窒素下で急冷処理を施した。AgTaO3において,高温下の電気炉から取り出した粉末の色を確認したところ,色が黄色に変化していたが,液体窒素下で冷やした後の粉末の色は紫色を呈していた。これはAgナノ粒子が粒子表面上に析出したためだと考えられる。そして,そのX線回折パターンを調べたところ,AgTaO3において,歪み由来の分裂したピークが一つのピークに近づいていることを確認した。しかしながら現状,完全なCubic相のAgTaO3は得られてない。本研究の目的を達成するためには,更なるストラテジーが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究によって,アニール処理後に液体窒素下での急冷処理を施すことで,準安定相が得られる可能性があることを見いだした。しかし,当初の目的であった完全なる準安定相が未だ得られていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,あらかじめ固相合成した材料に対してアニール処理を行い,急冷処理を施すことを試みた。当該年度の研究によって準安定相が得られる可能性を見いだすことができたが,完全なる準安定相を有する材料の開発には至らなかった。そこで,次年度よりフラックス剤を用いた合成法を適用する。フラックス剤の融点以上の温度にアニールし,その後,急冷処理を施すことで準安定相を有する材料の合成を試みる。
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Causes of Carryover |
今年度は,本研究の初年度であったということもあり,まずはモデル材料として比較的安価に合成できるものを選択した。さらには,合成法として,高価なものを必要としない固相合成に絞って研究を行ってきたため,当初の予定よりも支出が抑えられてしまった。しかし,次年度からは合成する材料のバリエーションを増やすために原料費が必要となる。また,合成法(フラックス法などを適用予定)や高温炉などに工夫を加える予定である。そこで,合成に必要な原料やるつぼ,高温炉の改良に必要な部品・材料などに対して費用を使用させていただく予定である。
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