2023 Fiscal Year Research-status Report
金属ナトリウム微粒子で探る、水酸化ナトリウムからの水素放出反応挙動
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22K14773
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
土井 大輔 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 敦賀総合研究開発センター, 研究副主幹 (50716107)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素 / 金属ナトリウム / X線回折(XRD) / 熱分析 / ラマン分光分析 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属ナトリウム(Na)と水酸化ナトリウム(NaOH)が反応して水素が放出される反応(Na+NaOH反応)は、ナトリウム-酸素-水素で構成される反応系で生じ得る他の水素放出反応と比べて、反応挙動(反応速度及び反応過程)が十分に解明されていない。本研究では、切出したナトリウム小片と水酸化ナトリウム粉末による不均質な混合試料ではなく、新たに作製する金属ナトリウム微粒子(粉末)を用いた均質な混合試料の熱分析(熱重量・示差熱分析及び質量分析(TG-DTA/MS))で反応速度を求め、温度可変の化学分析(X線回折測定及びラマン分光分析)と量子化学計算を併用して反応過程を明らかにする。 2023年度は、NaとNaOHとの混合試料で生じる化学反応を考察するため、異なる温度まで加熱した試料のX線回折測定や、加熱状態下でのラマン分光分析を実施するとともに、反応過程の推定に向けた量子化学計算を開始した。X線回折測定では、開放系の実験体系で混合試料を加熱し、異なる温度で反応させた後に試料中の結晶相を同定した。その結果、300℃前後から反応生成物(酸化ナトリウム(Na2O))が多く生じることがわかった。ラマン分光分析では、混合試料の昇温に伴い、反応物であるNaOHに相当するピーク強度が低下し、生成物であるNa2Oに相当するピークが生じており、NaOHが消費されNa2Oが生成されることが示唆された。過年度の熱分析では反応の進行に伴い水素(H2)を検出しており、これら実験結果から、NaとNaOHが反応してNa2OとH2が生成されることが実験的に示された。また、量子化学計算では、関連知見を調査するとともに、量子化学計算ソフトウェアGaussianを使用して、Nudged Elastic Band(NEB)法によりNaとNaOHとの反応経路(最小エネルギー経路)の推定を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、温度可変の化学分析(X線回折測定及びラマン分光分析)を実施し、水素放出反応(Na+NaOH反応)の全体像を概ね把握することができた。また、量子化学計算により反応経路の推定を開始できた。これら研究進捗は、概ね想定通りであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
熱分析(TG-DTA/MS)やX線回折測定の実験データを拡充する。また、量子化学計算で反応経路を推定し、Na+NaOH反応の反応過程を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
金属ナトリウム微粒子の粉末試料作製技術に習熟することで試薬等の消費量を低減するとともに、分析用消耗品に係る経費節約に努めたため、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、2024年度分研究費と合わせて、実験データ拡充に伴う消耗品購入に係る経費として使用する。
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Research Products
(1 results)