2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14774
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大岡 英史 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (90825994)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 電極触媒 / 活性予測 / 応用数理 / 反応速度論 / 熱力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸素発生反応(2H2O --> O2 + 4H+ + 4e-)は、水の電気分解によるグリーン水素製造のボトルネックとなることが知られている。このため、世界中で酸素発生反応を効率化するための触媒開発が行われている。特にこれまで、反応の自由エネルギー変化などの熱力学的パラメーターを中心に活性向上が行われてきた。この背景には、Sabatier則と呼ばれる、1913年頃に提唱された法則がある。この法則は、「良い触媒とは、反応基質と適度に相互作用をするものである。なぜなら、相互作用が弱すぎると触媒が十分に作用できず、逆に強すぎると触媒から反応基質が離れないためである。」と主張するものであり、現在の不均一触媒開発の礎となる基本指針である。特に、近年の機械学習を用いたデータ駆動型触媒設計でも広く使われている設計指針である。一方で、熱力学的な観点のみでは、反応がどの程度速く進むか、という定量的な活性予測が困難であるため、Sabatier則による活性予測の精度向上が課題となっている。
そこで本研究では、従来の熱力学モデルに対し反応速度論を導入することで、酸素発生反応の活性予測モデルを構築し、その正しさを実験および機械学習で検証することを目指す。本年度は活性予測の数式を導出できたため、次年度、その妥当性を検証する。導出の際には、既存の論文で主流とされる反応機構(H2O --> OH --> O --> OOH --> O2)に加え、その対立仮説となる反応機構(O+O --> O2)も考慮した。そして定常状態近似を仮定することで、触媒活性の理論式を獲得した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、最も苦労すると想定していた触媒活性の理論式を1年で導出できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでコバルトやマンガン、イリジウム酸化物の触媒活性データを取得しているため、これらを中心に理論式の検証を行う。理論と実験を照合する際、これまで開発してきた機械学習アルゴリズムを活用するが、これまで扱ってきた反応に比べて酸素発生反応は複雑なため、探索能力向上のためのアルゴリズム改良を行う。
|
Causes of Carryover |
機械学習による数値最適化アルゴリズムを効率的にの開発するため、その一部を専門業者に外部委託する予定であったが、昨年度発注しようとしたときに納期が年度末を跨ぐことが分かったため、繰り越し額が生じた。当初の予定通り、今年度改めて発注することで研究進展に活用したい。
|