2022 Fiscal Year Research-status Report
光触媒を用いたmRNAピンポイント光修飾法の開発と鎖間光架橋反応の解析
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22K14792
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山野 雄平 東北大学, 多元物質科学研究所, JSPS特別研究員(PD) (50938107)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNA / RNA / 光触媒 / ラベル化 / 光損傷 / 光反応 / APサイト / 架橋反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では 1.mRNAをピンポイントで光修飾する新手法の開発、および、2.光触媒反応下における鎖間架橋型の核酸損傷の機構解明を目指した。 1.本年度は、配列末端に鎖状(C6)リンカーを介して光触媒を導入したプローブDNA配列を設計・合成し、モデル標的配列(DNAあるいはRNA)と二重鎖形成させた。この二重鎖に対してラベル化試薬存在下で光を照射すると、光触媒近傍の核酸塩基やラベル化試薬から光触媒に電子が移動し、生じた活性種同士がラジカル反応を起こすことで配列選択的なラベル化を達成できると期待した。実際に、光照射後の反応産物を変性PAGEやMALDI-TOF-MSで解析した結果、本設計を利用した核酸のラベル化が可能であることが確認された。さらに、光触媒にATTO465、ラベル化試薬として特定のウラゾール系化合物を用いた場合には、配列選択的なラベル化も可能であることが示唆された。しかし、プローブDNAと二重鎖形成しない非標的配列もわずかに修飾されてしまうことがわかった。つまり、本設計をmRNAのような長鎖核酸の位置選択的なラベル化に適応しようと考えた場合には、選択性が不十分である(設計のさらなる改良が必要である)ことが示唆された。 2.予備実験で得た知見をもとに数種の自己相補的なDNAとRNAをモデル配列として選び、それぞれに光触媒存在下で光を照射した。その結果、興味深いことに、グアニンとシトシンに富んだ特定のDNA配列を用いた場合にのみ、グアニンの脱塩基反応(APサイトの生成)が効率的に起きることが明らかとなった。さらに、光照射時間を変えて反応産物を変性PAGEで解析した結果、APサイトは過渡的な架橋(中間)体を経て生じている可能性があることが示された。しかし、架橋体の具体的な化学構造やAPサイト生成のメカニズムは、十分には解明できておらず、更なる検証が必要であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では 1.mRNAをピンポイントで光修飾する新手法の開発、および、2.光触媒反応下における鎖間架橋型の核酸損傷の機構解明を目指した。 1.では、実際に光触媒導入DNAプローブを合成し、本プローブを用いた核酸の光ラベル化が可能であることを実証した。また、光触媒とラベル化試薬を様々検討することで、配列選択的なラベル化も可能であることが示唆された。本設計をmRNAの光ラベルへと応用するためには、更なる選択性の向上が求められるが、現在のところは概ね順調に進展していると考えている。 2.では、様々なモデルDNA配列やRNA配列に対して光触媒存在下で光を照射した。その結果、効率的にAPサイトを生成するDNA配列を見出した。この結果は当初、まったく予期していなかった。酸化損傷的にDNA配列中にAPサイトが生成すること自体は古くから知られているが、APサイト生成反応の配列依存性や詳細な反応メカニズムはほぼ明らかとなっていないため、この現象は極めて興味深い。既に、APサイトが過渡的な架橋体を経て生じていることを示唆する結果も得られているが、ここで観察された架橋体と予備実験で(ラベル化反応検証時に)見出された架橋体が同種の架橋体かは確認できていない。また、光照射後の二重鎖の酵素分解も試みたが、(恐らく架橋構造の安定性が低いため)架橋ヌクレオシドは検出できず、架橋構造の特定には至っていない。今後は種々の架橋体の構造決定とAPサイト生成のメカニズム解明に焦点を当てて研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.mRNAをピンポイントで光修飾する新手法の開発に関しては、非標的配列の意図しないラベル化を完全に抑制できるようにプローブの設計を改良する。具体的には、光触媒と消光剤を導入したプローブDNAを設計・合成する。標的非存在下ではモレキュラービーコンプローブのようにプローブ内で二重鎖(あるいは高次構造)を形成して光触媒と消光剤が近接することで光触媒能がOFFとなり、標的存在下では標的との二重鎖形成(あるいは高次構造形成)に伴い光触媒能がONになることを期待している。十分な選択性(光触媒能のスイッチング)を発現できた場合には、mRNAの位置選択的な光ラベルへと展開する。 2.光触媒反応下における鎖間架橋型の核酸損傷の機構解明に関しては、架橋(中間)体の構造決定とAPサイト生成のメカニズム解明に焦点を当てて研究を進める。具体的には、①核酸分解酵素の種類を検討し、架橋ヌクレオシドの検出を試みる、②光反応後の生成物を単離精製し、NMRやMSなどで解析する、③DNA配列中のG残基のリボース糖部位や塩基部位に修飾を加え、APサイトや架橋体の生成率を系統的に比較することで、どの部位が反応に関与しているのかを特定する、⑤各活性酸素種のスカベンジャーを添加して反応性を比較することで反応のメカニズムを考察する。
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Causes of Carryover |
設計の変更などに伴い、消耗品の購入量が予定より減少した。次年度の消耗品購入に使用し、予定していた実験をさらに充実させる予定である。
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Research Products
(7 results)