2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14796
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中嶋 裕子 (近藤裕子) 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (20634760)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環状mRNA / タンパク質翻訳 / 核酸プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
mRNA医薬は、標的タンパク質の情報をコードしたmRNAを合成し、投与することで、生体内で標的タンパク質を産生させ、治療や予防に使用する医薬品である。2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンが緊急承認され、世界で初めてmRNA医薬が実用化した。mRNA医薬は、ワクチン以外にもタンパク質補充療法として、難治性の疾患の治療訳としても注目されている。 mRNA医薬の課題の一つに、生体内での安定性があげられる。mRNAは、生体内で、核酸分解酵素により速やかに分解されてしまう。そこで、申請者は、環状構造のmRNAに着目して研究を進めた。環状mRNAは、末端をもたない構造であることから生体内での安定性が高いと報告されている。真核生物における環状RNAの翻訳活性は、キャップ構造を有しないことから、直鎖状mRNAに比べて低い。申請者は、核酸プローブを結合させることにより環状RNAの翻訳活性を向上できることを見出した。22年度は、環状mRNAの合成法の検討および、核酸プローブの構造最適化を行った。その結果、比較的短いmRNAの環化反応を高効率で行うことに成功した。また、プローブの長さや非天然塩基の導入数を決めることができた。また、プローブをハイブリダイゼーションにより結合させるだけでは、細胞へ導入した時に解離してしまい、活性が低くなることがわかった。そのため、核酸プローブに光架橋可能な分子を導入し、光照射することで、プローブと環状mRNAが共有結合する系を検討した。その結果、共有結合させることで、翻訳活性の増強が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、環状RNAの合成とプローブの最適化を到達目標として、研究を遂行した。環状mRNAは、ナノルシフェラーゼをコードする配列を選択し、レポーターアッセイにて翻訳活性を測定できるようにした。直鎖のRNAを転写合成したのち、RNA連結酵素を用いて環化反応を検討した。6割程度の収率で環化反応が進行する条件を見出した。その後、ゲル精製により、環状RNAを単離することに成功した。環状RNAに結合させる短いRNAは、化学合成した。化学合成の利点としては、非天然核酸を位置特異的に導入できることである。また、転写合成では、3‘末端の不均一性が生じるが、化学合成では設計通りの長さが合成できる。今年度は、2’OMe, LNAを修飾したRNAプローブを合成し、翻訳活性の向上に寄与するか検討した。その結果、5‘末端側に2’OMe基を導入したプローブが翻訳活性の向上に最も寄与することがわかった。環状RNAと結合させる塩基長は、Tm値から計算して求め、23塩基とした。また、環状RNAに結合しない部分(リンカー)の長さは、5~30塩基を検討した。その結果、リンカーの長さの違いで、翻訳活性の向上の度合は変化しないことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
一つ目には、環状RNAを合成・精製する手法を検討する。比較的短いmRNAの環化する反応は、20~30 塩基の相補的なDNAを結合させて、酵素により6割程度進行した。しかしながら、mRNAは、1000塩基を超える長さのものが多く、高次構造を形成することから、環化反応が難しくなることがわかってきた。今後は、長いRNAに対して高次構造を解消する手法や、RNAの末端の不均一性を切断などにより解決して、様々な長さ、配列のmRNAを環状にできるように研究を進める予定である。 二つ目には、環状RNAは、末端がない特徴的な構造から、リボソームが一度結合すると、回転して翻訳を続ける、ローリングサークル翻訳現象が報告されている。本研究で開発したRNAプローブを用いることで、ローリングサークル翻訳反応を促進できないか検討する。この場合、翻訳開始段階において、プローブが結合し、伸長段階~2回転目においてはプローブが解離していることが望まれる。そのため、プローブと環状RNAの結合能を適切に調節することが必要であると考えられる。
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Causes of Carryover |
今年度は、特許申請のために学会などで発表することを控えた。そのため、出張費として計上していた予算を次年度使用額とした。今年度は、特許の申請を終えて、学会などで研究成果の発表を積極的に行うために、旅費及び、学会参加費として使用する予定である。
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