2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14815
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
青野 陸 立命館大学, 生命科学部, 助教 (80777938)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セレン / アーキア |
Outline of Annual Research Achievements |
アーキアは細菌と同様に原核生物であるが、21番目のアミノ酸であるセレノシステイン (Sec) を含有するセレンタンパク質の合成機構は真核生物に近いと考えられている。Secは本来終止コドンであるUGAに挿入されることが知られており、その挿入にはmRNA上に存在し、ステムループ二次構造を形成するSec挿入配列 (SECIS) を必要とする。真核生物にはSECIS結合タンパク質eSBP2が存在し、Sec-tRNAを運搬するSelBはSECISに結合したeSBP2を認識することでポリペプチド中にSecを挿入する。しかし、真核生物のセレンタンパク質合成において鍵となるeSBP2はアーキアには存在せず、アーキアにおける詳細な合成機構は不明である。本研究ではアーキアにおけるセレンタンパク質合成機構の解明を目指して研究を行っている。 当該年度では、セレンタンパク質の合成が環境中のセレンにより制御されている可能性を考え、遺伝子発現変動解析を行った。メタン生成アーキア<i>Methanococcus maripaludis</i>を対象に検討したところ、亜セレン酸添加培地で培養した場合、セレンタンパク質の転写量は増加していたのに対し、セレンタンパク質合成系の転写量に大きな変化は見られなかった。また、<i>hmgA</i>をマーカー遺伝子とした相同組換えによる、好熱性メタン生成アーキア<i>Methanothermococcus okinawensis</i>の遺伝子組換え系の開発に成功し、本菌を用いた遺伝学的解析の基盤を構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、セレンタンパク質の合成が環境中のセレンに応答するのかを検討し、多くのセレンタンパク質の発現が誘導される一方、その合成システムの発現には大きく影響しないことを見出した。また、好熱性メタン生成アーキアの遺伝子組換えシステムを新たに開発し、遺伝学的解析を行うための基盤技術の開発にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析に加えて、バイオインフォマティクス解析も駆使して、セレンタンパク質合成システムに必要と予想される新規タンパク質の探索を行う。また昨年度開発した遺伝子組換え系について、さらなる条件検討を進め、より高効率なシステム開発へ向けて検討を行う。
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Causes of Carryover |
より詳細に研究内容の検討を進めるため、当初の期間に加えて1年延長することから、次年度使用額が生じた(延長申請済み)。主に、遺伝子組換えシステムの高効率化を目指した種々の検討などに必要な試薬の購入や、論文執筆や学会発表などの成果報告に必要な費用への使用を計画している。
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