2022 Fiscal Year Research-status Report
ダイズ細胞内のイソフラボン配糖体の分解代謝機構の解明
Project/Area Number |
22K14823
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和氣 駿之 東北大学, 工学研究科, 助教 (10793705)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フラボノイド / イソフラボン / 分解代謝 / ダイズ / 培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物特化代謝産物の一群であるフラボノイドは主に配糖体として植物細胞内の液胞に蓄積することから,フラボノイドの細胞内動態の解析は主に生合成と液胞への輸送機構に焦点があてられてきた.しかし,ダイズイソフラボノイドなどは,環境応答により積極的な代謝分解を受けることも知られており,蓄積しているイソフラボン配糖体の分解代謝もまたダイズの生理応答に重要な役割を果たしていることが想定されるが,その分解代謝機構はほとんど明らかになっていない.本研究では,ダイズイソフラボン配糖体の分解代謝機構を明らかにするため,環境応答が迅速で均一な細胞集団であるダイズ懸濁培養細胞を実験材料として,エリシター処理に応答した細胞内イソフラボノイドの代謝動態を解析する.本年度は,これまでに申請者により樹立されたダイズ懸濁培養細胞(ECW1)にエリシター処理としてYeast Extract (YE,ナカライテスク)を添加し,ウェスタンブロットによる既知のイソフラボン生合成酵素のタンパク質発現レベルを解析し,また,抽出した粗酵素溶液におけるβ-グルコシダーゼ(BGLU)活性およびイソフラボンアグリコンの分解活性を測定した.その結果,フラボノイド生合成の初発酵素であるカルコン合成酵素(CHS)およびファイトアレキシン生合成の鍵酵素であるカルコン還元酵素(CHR)などの発現量は遺伝子発現にやや遅れて上昇し,処理後24時間で最大となった.一方,イソフラボン配糖体の分解への寄与が想定されるBGLU活性はYE処理後すぐに一過的に上昇することが示された.イソフラボンアグリコンであるDaidzeinの分解活性も検出されたが,生成物はまだ明らかではない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ダイズ懸濁培養細胞(ECW1)におけるYE添加の影響を再度詳細に解析した.HPLCによりイソフラボノイドの代謝変動を明らかにし,粗酵素アッセイにより遺伝子発現変動とBGLU活性値の変化を明確化した.これにより当初予定していたイソフラボン配糖体の分解代謝に関わる「①BGLU候補遺伝子」を複数見出すことができ,さらに一部の候補BGLUは大腸菌組換え酵素による活性評価が完了した.「②イソフラボンの分解酵素」に関しては生成物の構造解析が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
「①BGLU候補遺伝子」は,引き続き大腸菌組換え酵素を用いた活性評価を行う.さらに,ECW1またはベンサミアナタバコに蛍光タンパク質を融合させたBGLUを一過的に発現させ,BGLU候補遺伝子の局在解析を行う.また,候補BGLUの発現をRNAiにより抑制したECW1細胞ラインを作製し,YE応答への影響を解析する.「②イソフラボンの分解酵素」に関しては,見出されたDaidzeinの分解活性により生じた生成物の構造解析を行い,目的活性を指標とした酵素精製により候補遺伝子を取得する.その後,①と同様に候補遺伝子の解析を進める.
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Causes of Carryover |
初年度に計画していた実験の一部(ダイズ培養細胞のRNA-seqなど)を実施できなかったため,次年度使用額が生じた.2023年度に実施予定である.
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