2022 Fiscal Year Research-status Report
ピロリン酸依存性プロテインキナーゼの探索とその構造機能解析
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22K14825
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 隆平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (10836703)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ピロリン酸 / キナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質のリン酸化は、キナーゼがATPから基質タンパク質へとリン酸基を受け渡すことで起こる。この反応は、細胞内でのシグナル伝達などに関わる重要な生体反応の一つである。一方、糖代謝などではATPでなくピロリン酸(PPi)をリン酸基供与体に用いるキナーゼが見つかっている。そこで本研究では、申請者が考案した探索方法によってゲノム情報からPPi依存性プロテインキナーゼを見つけ出し、その機能や反応機構を明らかにすることを目指す。 本年度は、申請者が見つけたPPi依存性プロテインキナーゼの候補遺伝子TmHKの機能解析と他候補のin silicoスクリーニングによる探索を行った。TmHKは自己リン酸化を行うヒスチジンキナーゼであることから、機能解析はTmHKのリン酸化状態を電気泳動法によって分析することで行った。リン酸基に特異的に結合する試薬Phos-tag(E. Kinoshita, et al., Proteomics, 2008)を電気泳動のゲルに加えることで、目的酵素のリン酸化状態と非リン酸化状態を分離することを試みた。酵素反応における温度・時間・基質濃度などの反応条件や、泳動時のPhos-tag濃度やアクリルアミド濃度を検討することで、リン酸化されたTmHKを検出することに成功した。しかし、TmHKはATP, ADP, PPiをリン酸基供与体に用いた場合、ATPがあるときだけリン酸化され、予想に反してATP依存性であることがわかった。 次に、他の候補のin silicoスクリーニングによる探索を行った。ここではスクリプトを自作することで一部の作業を自動化でき、大規模なスクリーニングを可能にした。今後、ここで確立した方法を様々な生物種に適応することで、目的酵素を効率的に探したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的のPPi依存性プロテインキナーゼはまだ同定できていないものの、初年度は目的酵素の探索に必要な技術を着実に確立してきた。これらの技術は、2年目以降の研究の推進に役立つものであるため、ここまでの進捗状況は概ね順調だと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で確立したin silicoスクリーニングの手法を活用し、色々な生物種でのスクリーニングを進める。見つけた候補遺伝子については順次酵素活性を確認していく。
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Causes of Carryover |
本年度では、新しいGPUを購入し、所有する計算機に搭載してAlphaFoldの計算の高速化に用いる予定であったが、AlphaFoldによる予測構造のデータベースが公開されたことによりGPUの購入は必要なくなった。本予算は、2年目以降の多数の候補遺伝子の活性スクリーニングに必要な人工遺伝子や試薬の購入に充てる。
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