2022 Fiscal Year Research-status Report
ラマン分光法とDNB解析を組み合わせた細胞遷移状態分岐点解析技術開発
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22K14827
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
竹谷 皓規 富山大学, 学術研究部教育研究推進系, 特命助教 (50825312)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | DNB理論 / ラマン分光法 / 遷移点解明 / 炎症細胞モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
課題推進者はこれまで、DNB理論とラマン分光法を組み合わせた炎症細胞の遷移点解明を目指し研究を進めてきた。RAW細胞にリポ多糖を添加させて炎症を起こさせる細胞モデルを使用し、炎症開始から24時間連続でラマンスペクトルの計測を行い、DNB理論を用いた揺らぎ解析を用いてラマンスペクトルが揺らぐ瞬間を特定していった。その結果、ラマンスペクトルの揺らぎが生じる時間を特定できたことから、細胞が炎症反応を起こす際の遷移点を特定できることが示唆され、3回の実験で同様の時間にラマンスペクトルが揺らぐことが確認された。 本研究課題について、これまでの成果を2022年9月2日に開催された「レーザー学会研究会第566回研究会 光・レーザーの医学・医療応用」において、「ラマン分光法とDNB解析による細胞遷移状態における分岐点解明技術開発」という題目で口頭発表を行った。 また、2023年1月20日に開催された「レーザー学会第43回年次大会」において、「ラマン分光法とDNB解析の組み合わせによる炎症反応における細胞遷移状態の解明」という題目で口頭発表を行った。 現在はデータの拡充を行い、論文作成へ向けて準備を進めている段階に入っている。今後はデータの拡充及び、揺らぎが生じた遷移点前後で細胞にどのような変化が生じたのかを確認するため、細胞の遺伝子発現解析を行い、ラマンスペクトルの変化と照らし合わせていく予定である。炎症細胞の遷移点において生じている現象を解明できれば、細胞の炎症におけるターニングポイントとしてその時点までに創薬を作用させることができれば炎症が止められるのではないかと考えられる。本研究が、医学薬学分野で重要な成果になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、遷移点をDNB理論とラマン分光法の組み合わせによって検出することとを達成するためにこれまで研究を進めてきた。現時点で、DNB理論による解析から、炎症反応を起こしている細胞から得られるラマンスペクトルに揺らぎが生じる時間があることを確認した。これまで他に炎症反応細胞の揺らぎを検出した事例は確認されていない。このことから、本研究は目的に大きく近づいた。 現在は実験の再現性をさらに確認し、詳細な炎症細胞の具体的な状態変化を突き止めるために改めて実験を行う段階に入っている。現時点で論文作成に向けて必要最低限の結果は得られたことから、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNB理論による解析は非常に微弱な変化に影響されるため、再度複数回炎症反応を示す細胞をラマン分光法で測定を行う実験を行い、再現性のさらなる確認を行う。その際に、遷移点前後における細胞内変化を詳細に解析するため、遷移点前後で細胞を回収しRNA抽出を行う。得られたRNAから遺伝子発現解析を行う。ラマン分光法はサンプルの分子情報変化を検出できるが、具体的な変化の特定が困難であるという課題があるため、ラマン分光法の情報に遺伝子発現解析結果を加えることで、ラマンスペクトルの変化を裏付ける必要がある。炎症細胞に遷移点が存在することを、数理学的手法と生化学的手法両方から明らかにすることを目指す。 一連のデータがそろい次第、成果発表と論文化を順次進めていく。
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