2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14836
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森田 真布 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (30865184)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 共生細菌 / 生合成 / 葉状体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトエグサ類やアオサ類の緑藻細胞を完全無菌条件下で培養すると、シート状の葉状体を形成するはずの細胞は正常な形態変化を起こすことができないことが知られている。過去の研究から、海藻表面の共生微生物により形態形成が誘導されることが指摘されており、緑藻表面の共生細菌から活性物質が同定された例が報告されている。本研究では共生細菌が生産する有機低分子により宿主細胞に葉状体形成が引き起こされるメカニズムの理解を目指している。昨年度に引き続き、ヒトエグサ細胞に対する葉状体形成活性を指標にして、共生細菌の培養液から活性物質のの分離精製に取り組んだ。共生細菌の上清と分離したフラクションに関して、葉状体への顕著な誘導活性は確認できていないが、共生細菌由来の粗画分を用いると滅菌海水のみの場合と比較して、単細胞からカルス状細胞塊へ変化することは観察されている。そこで、活性試験の代わりに質量分析を指標とすることを目的として、細胞塊の形成を促進した各分離フラクションについて高分解能質量分析を検討したが、いずれの画分からも目的化合物に由来するm/zは検出できなかった。また、昨年度に引き続き、共生細菌株の二次代謝産物の生産能について遺伝子探索を行った。活性物質の生産株からゲノムDNAを取得し、ショットガンシーケンスにて配列解析を実施した。昨年度までの結果から本化合物の生合成遺伝子はクラスターを形成していないと考えられ、各反応の推定酵素を相同性探索にて個別にスクリーニングした。その結果、本化合物の推定下流経路に関わる候補遺伝子群は検出できなかったが、上流の基質合成に関わると推定される酵素の候補遺伝子群が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共生細菌株による物質生産能が極めて微量であるため、実験で用いる化合物の取得に時間を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
物質生産効率を向上させるような培養条件を探索しつつ、分離方法を見直す。生合成遺伝子が点在していると推定される細菌株についてはロングリードシーケンスも検討する。分解能質量分析による検出をさらに検討し、生合成経路仮説の精度を上げるために野生株における基質の取り込み実験を実施する。
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Causes of Carryover |
実験に遅れが生じたため、本年度中に実施する予定だった実験の消耗品費の使用に遅れが生じた。当初の使用目的どおり、消耗品費として次年度に使用する。
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