2022 Fiscal Year Research-status Report
Expression of malaria parasite mitochondrial protein in yeast and design of novel antimalarial compounds
Project/Area Number |
22K14838
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
伊藤 剛 徳島大学, 先端酵素学研究所, 助教 (50897733)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / リンゴ酸-キノン酸化還元酵素 / TCA回路 / マラリア原虫 / 異種発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫リンゴ酸-キノン酸化還元酵素 (PfMQO)は、リンゴ酸からオキサロ酢酸への酸化とキノンからキノールへの還元を触媒する。本酵素は、マラリア原虫ミトコンドリアにおいてTCA回路と電子伝達系の構成因子として機能すると考えられており、抗マラリア剤の有望な標的分子として注目されている。2022年度はPfMQOの機能研究を可能とするマラリア化酵母の構築とミトコンドリアにおけるPfMQOの機能解明を目指した。 酵母ミトコンドリアのリンゴ酸脱水素酵素(yMDH1)を欠損させ、かわりにPfMQOを組込むことで、推定されているマラリア原虫ミトコンドリアを模倣したマラリア化酵母(PfMQO発現株)を作製した。生育試験の結果、PfMQOの発現はyMDH1欠損株の生育を相補することがわかった。すなわちPfMQOは、TCA回路でリンゴ酸をオキサロ酢酸に酸化するyMDH1と相同な機能を有するミトコンドリアタンパク質であることが示唆された。 さらに、PfMQO発現株の細胞分画を実施し、PfMQOがミトコンドリアで機能発現することを明らかにした。また、ミトコンドリアの呼吸活性を測定した結果、PfMQOを介するTCA回路依存的な呼吸活性が認められた。 次に、リンゴ酸の取込み能が異なるインタクトおよび超音波処理したミトコンドリアについてPfMQO活性を詳細に比較することで、PfMQOのリンゴ酸反応部位がマトリックス側に位置することを同定した。以上の結果より、PfMQOがTCA回路の構成因子として機能するミトコンドリアタンパク質であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、PfMQOの機能研究に利用可能なマラリア化酵母の構築に成功した。また、このマラリア化酵母を駆使し、PfMQOがTCA回路の構成因子として機能するミトコンドリアタンパク質であることを明らかにした。このような理由から、研究はおおむね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
MQOはマラリア原虫などの原生生物や一部のバクテリアに分布しているが、いずれにおいてもその立体構造は明らかとなっていない。また、PfMQOの強力な阻害剤としてferulenolが報告されているが、ドラッグデザインの手掛かりに必要な阻害剤の結合様式は未だ不明なままである。2022年度の研究で構築に成功したマラリア化酵母は、酢酸培地においてPfMQO(酸化的リン酸化)を要求するため、変異あるいは阻害剤が与えるPfMQO機能への影響を生育試験レベルで評価できる。そこで2023年度は、様々なPfMQO変異株を作製し、それらについて生育試験を実施することでPfMQOの機能に深く関与する、あるいは阻害剤との相互作用にかかわるアミノ酸残基を特定し、PfMQOの分子特性を精査する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、PfMQO発現酵母の構築に早々に成功したため、発現系構築のための条件検討を要さず、遺伝子組換え実験で計上した予算に余りが生じた。また、遺伝子組換え実験以外にも多くの実験消耗品を必要とするが、2022年度は消耗品のストックを使用することで実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。余剰の予算の一部は、本研究の成果として2023年3月にアメリカ微生物学会Microbiology Spectrum誌にアクセプトされた学術論文の出版料として既に計上している。また、2023年度は実験における遺伝子組換え実験の割合が増える予定であるため、残りの予算についても翌年度分として請求した研究費と合わせて計画的に使用する予定である。
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