2023 Fiscal Year Research-status Report
Expression of malaria parasite mitochondrial protein in yeast and design of novel antimalarial compounds
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22K14838
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
伊藤 剛 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (50897733)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / リンゴ酸-キノン酸化還元酵素 / TCA回路 / マラリア原虫 / 異種発現 / 触媒機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫リンゴ酸-キノン酸化還元酵素(PfMQO)は、リンゴ酸からオキサロ酢酸への酸化とキノンからキノールへの還元を触媒する。本酵素は、マラリア原虫ミトコンドリアのTCA回路と電子伝達系の構成因子として機能すると考えられており、抗マラリア剤の有望な標的分子として注目されている。前年度は、PfMQOが酵母ミトコンドリアで発現し、酵母のリンゴ酸脱水素酵素(yMDH1)の機能を代替することを示した。また、本酵素のリンゴ酸反応部位がマトリックス側に位置することを同定し、PfMQOがTCA回路の構成因子として機能するミトコンドリアタンパク質であることを明らかにした。 2023年度は、PfMQOの立体構造と触媒機構の理解を目指した。無水酢酸を利用したprotein footprintingでは、低分子が接触可能な露出した求核性アミノ酸残基(Lys, Ser, Thr, Tyr, Cys, His)を網羅的にアセチル化修飾することができる。本手法をPfMQOに適用し、基質等が接触可能なアミノ酸残基をマッピングした。また、AI(AlphaFold2)による構造予測モデルを合理的に組み合わせ、補因子FADが結合し得るcavityを見出した。 得られた構造情報に基づく点変異解析により、触媒部位(H123、H343、Y330)を同定した。また、その近傍のK135の置換では、リンゴ酸の拮抗阻害剤ferulenolに対する感受性が向上した。つまり、K135は阻害剤結合部位と重なって、かつリンゴ酸結合部位と隣接して位置すると考えられ、同定した触媒部位とも矛盾しない。構造的/機能的に相同なタンパク質の構造と触媒機構を参照したところ、上述のcavityにおけるFADの結合が強く示唆され、その詳細な結合様式を推定することができた。さらに、PfMQOにおけるリンゴ酸の酸化反応機構を提案することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FerulenolはPfMQOをnMオーダーで阻害する強力な阻害剤であるが、PfMQO発現酵母(マラリア化酵母)に対する強い生育阻害は認められなかった。そのため、当初予定していた生育試験に基づく阻害剤耐性PfMQOの網羅的スクリーニングと、それに基づく触媒部位の探索は断念した。 一方、protein footprinting、AIによる構造予測、および点変異解析を合理的に組み合わせることで、PfMQOの触媒部位を明らかにした。また、阻害剤結合部位に関する知見も得ることができた。さらに、構造的/機能的に相同なタンパク質の構造と触媒機構を参照することで、FADとリンゴ酸の結合様式を示すとともに、リンゴ酸の酸化反応機構を提案することに成功した。これらの知見は、新規阻害剤をデザインする上で重要なヒントとなり得る。このような理由から、研究はおおむね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
PfMQOにおけるFADとリンゴ酸の結合様式について一定の知見が得られたことで、リンゴ酸の酸化反応機構を提案することができたが、キノンの還元反応機構については未だ不明なままである。そこで2024年度は、MQOにおけるキノン結合部位を明らかにし、触媒機構の全容を精査する。さらに、得られた知見をもとにMQO阻害剤をデザインする予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は、上述の計画の変更に伴い、遺伝子組換えおよび細胞培養実験で計上した予算に余りが生じた。余剰の予算の一部は、本研究の成果として2024年4月にアメリカ化学会ACS Omega誌にアクセプトされた学術論文の出版料として既に計上している。また、2024年度は実験における有機合成実験の割合が増える予定であるため、残りの予算についても翌年度分として請求した研究費と合わせて計画的に使用する予定である。
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