2023 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性分子群の網羅的リアルタイムセンシングを利用した食品熟成過程の制御
Project/Area Number |
22K14841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 航 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70908300)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガスセンサ / 揮発性分子群 / 食品 / フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)やガスセンサアレイを利用して取得した揮発性分子群の網羅情報を機械学習によって解析することで、人や食品、環境の状態を識別する研究が活発に行われている。特に食品の揮発性分子群センシングでは、熟成度(腐敗度)の判別への応用が進んでいる。しかし、機械学習によって得られた揮発性分子指紋と熟成度の相関情報をフィードバックして、熟成過程を制御した例は存在しない。本研究では、「堅牢なガスセンサアレイを揮発性分子群のリアルタイムモニタリングに適用し、食品の熟成過程を多成分分子群の言葉(匂い)で理解した上で、この過程を制御すること」を目的とした。測定対象として、非常に需要が大きく簡単に入手可能なバナナを対象として実験を行った。ガスセンサとしては、酸化スズ薄膜に金属・有機分子を修飾して分子群に対する反応性を変化させた4種類の半導体センサをアレイ化したものを作製して使用した。バナナの熟成によって刻一刻と変化する匂い分子群をガスセンサアレイによって10日間に渡ってリアルタイムモニタリングした。その結果、バナナの匂いから得られるセンサシグナルから、果物の味の重要な指標となる糖酸比を高精度で推測するモデルを構築することに成功した。また、同時に、GCMSによって分析した酢酸エチルをはじめとするバナナに特徴的な揮発性分子群の情報を利用した糖酸比の高精度推測にも成功している。しかし、10日間連続で高湿度環境にてバナナの匂いを測定し続けることで、センサの抵抗値や感度が測定前から変化してしまい、目的であるフィードバック制御の達成はできていない。現状、測定前のセンサのエイジング方法の最適化やセンサ材料の変更によって、高湿度環境下におけるセンサの堅牢性の改善を図っている段階である。
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