2022 Fiscal Year Research-status Report
新規メイラード色素化合物フルペンチアジネートの生成機構と食品との関連の解析
Project/Area Number |
22K14842
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
野田 響子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (40851374)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メイラード反応 / 褐変 / システイン |
Outline of Annual Research Achievements |
食品の加工・貯蔵中における色調の変化はその品質に重要な影響を与える。メイラード反応は多くの食品の色調変化に関わるが、その生成物の詳細な構造や反応機構については、不明な点が多くある。本研究では、メイラード反応による食品の色調変化の機構解明を目指し、申請者が見出した新規色素化合物であるフルペンチアジネートおよびその類似色素化合物について、生成経路の推測や食品中の分布を調べることを目的としている。フルペンチアジネートはシステインと5炭糖およびその主要な酸分解物であるフルフラールとの酸性下におけるメイラード反応により生成し1分子のフルフラールと1分子のシステイン、4つの炭素からなる鎖状の部分構造からなるが、この鎖状の部分構造の由来は不明である。そこで2022年度は放射性同位元素で修飾した5炭糖のリボースを用いてフルペンチアジネートを作成し、放射性同位元素の挿入箇所を各種スペクトル解析により確認することで、この鎖状の部分構造がどのような糖の分解物に由来するか推測した。また、予備検討によりシステインと6炭糖およびその酸分解物の5-ヒドロキシメチルフルフラールとの反応によってもフルペンチアジネートと同様に色素化合物が生成することが明らかになった。フルペンチアジネートと同様に、生成経路の推測や食品中の分布を調べるために、2022年度はこの化合物の構造決定にむけ、システインとフルクトースのモデルメイラード反応液より各種クロマトグラフィーや溶媒分画法を用いて目的物質を単離し、機器分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度に実施を予定していたフルペンチアジネートの生成経路の検討については、滞りなく実験が終了した。一方で、2022年度までに6炭糖由来のフルペンチアジネート様色素化合物の構造を決定し、2023年度にその生成経路検討を行う予定であったが、2022年度の間にフルペンチアジネート様色素化合物の構造決定には至らなかった。2022年度の研究により、フルペンチアジネート様色素化合物もフルペンチアジネートと同様に互変異性を持つ可能性が考えられ、構造決定には還元やアセチル化などの工夫が必要であることがわかった。しかし本化合物はフルペンチアジネートに比較してやや不安定であり、還元物やアセチル化体の作成に必要な量の単離が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施を予定していたフルペンチアジネート様色素化合物の生成経路検討を行うために、まずは構造を決定する必要がある。単離・精製手順は2022年度までに確立したため、より多くのモデルメイラード反応液を調製し、フルペンチアジネート様色素化合物の単離・精製を優先して行う。2023年度はフルペンチアジネート様色素化合物の還元やアセチル化などの誘導体化を行うことで部分的な構造推定を重ね、最終的な構造決定を目指すとともに、可能な範囲で生成経路の検討も行う。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会がオンライン開催となったため。また、予定よりも実験に遅れが生じ、一部高額な試薬の購入が必要なくなったため。これらの費用は次年度に追加して行うことになった色素化合物の大量調製や誘導体化の費用に充当する予定である。
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