2023 Fiscal Year Research-status Report
葉緑体を中心とするオルガネラ間コンタクト形成因子の同定と機能評価
Project/Area Number |
22K14865
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 咲耶 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (20845151)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コンタクトサイト / Split-GFP / 葉緑体 / オルガネラ / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞では、葉緑体、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、小胞体といった複数の細胞小器官(オルガネラ)を行き来する代謝経路が機能している。近年、オルガネラ膜上の一部が他のオルガネラ膜と近接する領域を形成して物質輸送を効率化するオルガネラコンタクトサイトの存在が知られるようになった。本研究は、植物細胞において異なるオルガネラとの連携を担うコンタクトサイトに関わる因子として、特に葉緑体を中心としたコンタクトサイトの可視化と機能因子群の同定を進めた。2023年度は特に以下のような進展があった。 昨年度までに、各オルガネラ膜上に改変型ビオチンリガーゼ(TurboID)を発現させるコンストラクトおよび形質転換体の作製を進めており、今年度はそれらの発現チェックと安定発現系統の整備を行った。これに加えて、2種のオルガネラが接近したコンタクトサイト部分に特異的なタンパク質群を濃縮してくるために、TurboIDを分割した2つの不活性断片を異なるオルガネラ膜上に発現させるSplit-TurboIDのコンストラクト作製を進めた。Split-TurboIDのN末端側およびC末端側断片について複数のタイプの融合コンストラクトを作製し、双方を一過的に発現させたベンサミアナタバコ葉においてSplit-TurboID再構築が起きるかを調べた。その結果、一部の組み合わせにおいてTurboIDの再構成とビオチン化が起きていることが示唆された。そこで、これらコンストラクトについては、2種を安定発現する形質転換シロイヌナズナを作出するとともに、一過的なTurboID再構築を可能にするための薬剤誘導型コンストラクト導入株の作出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記に記載したように、目的とするコンタクトサイト形成因子をより正確に絞り込むため、TurboIDを分割したSplit-TurboIDを各オルガネラ膜に発現させるコンストラクトの作製を行った。再構築が正常に起きるコンストラクトの整備に想定以上の時間を要したため、研究の進捗はやや遅れていると言える。ただし、Split-TurboIDの発現と機能が確認された組み合わせが得られたため、期間延長した次年度にその組み合わせから得られるタンパク質の質量分析を行うことで、コンタクトサイト関連因子群の同定に取り組めるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は、「区分② 補助事業の目的をより精緻に達成するための研究実施」に該当する追加実験が生じたため、期間延長を申請した。延長した最終年度で、異なるオルガネラ間に付与したsplit-TurboIDにより濃縮されたタンパク質群の質量分析を進め、得られたデータの詳細な解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
上記に記載のとおりSplit-TurboID発現用コンストラクトの作製に想定よりも時間を要したため、期間延長した令和6年度で、このコンストラクトにより作製した形質転換体を使って質量分析を行う予定である。そのための解析費用および、絞り込んだ候補遺伝子についての局在解析といった検証実験に必要な試薬・消耗品等の費用として、翌年度分として請求した助成金を使用する。
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