2022 Fiscal Year Research-status Report
アブラナ科自家不和合性の花粉吸水制御における細胞膜H+-ATPaseの機能解析
Project/Area Number |
22K14867
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 真妃 東北大学, 生命科学研究科, JSPS特別研究員(PD) (30942106)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 受粉反応 / 細胞膜H+-ATPase / アブラナ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の中には、自身の花粉では受精を行わず、他個体の花粉でのみ受精を行う自家不和合性植物が存在する。この自家不和合性反応では、他個体の花粉は雌しべ乳頭細胞から水が供給されて花粉吸水が起こり、最終的に受精に至る。しかし、自身の花粉では花粉吸水は起こらず、柱頭上での花粉管発芽や、めしべ内への花粉管侵入が起こらなくなるため受精に至らない。柱頭上での自家花粉と他家花粉の認識機構や、認識後に乳頭細胞内のシグナル伝達により花粉吸水が誘導されることは明らかになってきているが、実際に雌雄細胞間の水の移動がどのように制御されているかは未だ不明である。本研究では植物細胞の浸透圧調節を担う細胞膜H+-ATPaseに着目し、本年度はアブラナ(Brassica rapa)の雌しべにH+-ATPase活性化剤もしくは阻害剤を処理して自家不和合性にどのような影響が見られるか調べた。また、シロイヌナズナの細胞膜H+-ATPaseの恒常活性型変異体を用いた雌しべ内の花粉管伸長観察から、H+-ATPaseの活性変化が花粉管伸長に影響を及ぼすことを明らかにした。現在、受粉から受精までの過程において、H+-ATPaseが花粉吸水に影響するか、活性化剤、阻害剤処理したアブラナの雌しべやシロイヌナズナ変異体を用いた花粉吸水測定によって解析している。これにより、植物の乳頭細胞の細胞膜H+-ATPaseが花粉吸水を制御しているかどうかを明らかにし、乳頭細胞の細胞膜H+-ATPaseの活性制御による膨圧調節が花粉吸水に重要であることを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アブラナの柱頭で薬理学的に細胞膜H+-ATPaseの活性を変化させることで、自家不和合性の和合、不和合反応に変化が見られることを明らかにした。また、シロイヌナズナを用いた遺伝学的解析でもアブラナと同様に受粉反応に対するH+-ATPase活性の影響を観察でき、乳頭細胞のH+-ATPaseがアブラナ科植物の受粉反応に重要であることを示した。またアブラナの細胞膜H+-ATPaseのアノテーションを行い、アブラナのH+-ATPaseが18個あることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は解析中の花粉吸水測定を引き続き行うとともに、受粉反応の中でも特に花粉吸水で細胞膜H+-ATPaseの活性が重要であるかを明らかにしていく。受粉前後のシロイヌナズナ、アブラナの乳頭細胞で細胞膜H+-ATPaseの活性が変化するのか、またアブラナでは和合花粉、不和合花粉で活性が変化するのかを、H+-ATPaseの活性を反映するリン酸化を指標にして検出する。また、前年度アノテーションしたアブラナのH+-ATPaseの乳頭細胞における発現をqPCRによって調べ、主要に発現するアイソフォームを明らかにする。以上の結果をまとめ、論文にし国際雑誌へ投稿する。
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Causes of Carryover |
天候不順や気温の変動により、アブラナの生育が計画通りにいかず、後期に育成したアブラナを使用することとなり実験計画が半期ずれた、これにより、後期のアブラナを用いて受注したRNAseqやDNAseq等の金額が年度末の会計の都合で次年度へと変更になり、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)