2023 Fiscal Year Research-status Report
アブラナ科自家不和合性の花粉吸水制御における細胞膜H+-ATPaseの機能解析
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22K14867
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 真妃 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (30942106)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 花粉吸水 / 細胞膜H+-ATPase / 自家不和合性 / アブラナ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度にアノテーションしたアブラナのH+-ATPaseの柱頭における発現をqPCRによって調べ、アブラナの18遺伝子存在するH+-ATPaseアイソフォームのうち、3遺伝子が強く発現していることが分かった。さらに、乳頭細胞H+-ATPaseの花粉吸水における機能を調べるため、H+-ATPaseの活性化剤と阻害剤を処理したアブラナ柱頭での花粉の吸水速度測定を行った。その結果、活性化剤を処理した場合では和合花粉の吸水が抑制され、阻害剤を処理した柱頭では不和合花粉の吸水が促進された。この結果は、前年度に行った化合物処理時のアブラナの自家不和合性反応と一致していた。このことから、アブラナ乳頭細胞では、細胞膜H+-ATPaseが受粉反応時に機能し、自家不和合性を調節していることが示唆された。また、受粉反応時のH+-ATPaseの機能を遺伝学的に調べるため、シロイヌナズナの柱頭で発現するH+-ATPaseのAtAHA1恒常活性化型変異体ost2-2Dの雌しべを用いて解析を行った。結果、野生型の雌しべと比較して花粉吸水速度の低下が見られた。さらに、その後の雌しべ内での花粉管伸長もost2-2D変異体で低下することがわかった。以上の結果から、アブラナ科植物の乳頭細胞の細胞膜H+-ATPaseの活性が花粉吸水を制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
化合物処理によりH+-ATPase活性を変化させたアブラナ柱頭で、自家不和合性反応に変化がみられ、シロイヌナズナのH+-ATPase恒常活性型変異体の雌しべでも花粉吸水速度の低下がみられた。このことから本申請研究の当初に仮説とした、アブラナ科植物の受粉反応でのH+-ATPaseの機能の重要性が示され、さらにタンパク質活性が花粉吸水に関与している可能性まで示すことができた。しかし、実際にH+-ATPase活性が自家不和合性反応の受粉前後に変化しているのかは現在調査中であり、計画の達成には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は受粉前後の乳頭細胞のH+-ATPase活性に変化の有無を明確にした後、得られた結果を元に論文を作成し、国際雑誌へ投稿する。
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Causes of Carryover |
野外でアブラナを生育しているが、気温の変動が激しく、生育期間が短くなってしまった。そのため、予定していた実験を完了することができなかったため、次年度も引き続き本研究の継続が必要になった。 次年度使用額は実験の消耗品代と論文の英文校正、投稿費に使用する。
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