2023 Fiscal Year Research-status Report
イネ茎葉部に蓄積する澱粉の多様性と原因遺伝子の解明
Project/Area Number |
22K14875
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 隆太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30866075)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 澱粉の多様性 / アミロース・アミロペクチン / 稲わら / イネ / ハプロタイプ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの胚乳に蓄積する澱粉には澱粉生合成関連遺伝子の自然変異が存在し、「もち米」や「ジャポニカ米」として我々の日々の生活に利用されている。一方で、イネの茎部にも澱粉が蓄積するが、茎部蓄積澱粉にどのような多様性があるかは解析されていない。そこで本研究では世界のイネコアコレクション(WRC)69系統を用いて、稲わらに蓄積する澱粉のアミロース・アミロペクチン比などの分子構造や、糊化温度などの物理化学的特性の多様性について解析を行う。さらにSNPデータベースを用いたハプロタイプ解析を行い、茎部び蓄積する澱粉の多様性が生じる原因遺伝子の同定を行う。 本年度は初年次と同様、WRC69系統を附属生態調和農学機構の水田で栽培試験・サンプリングを行う計画だった。しかしながら、田植え直後の大雨の影響で水田が2-3週間冠水してしまい、一部の系統が枯死してしまった。このため本年度は栽培試験を断念し、当初計画を変更して次年度に再度栽培試験を行うこととした。 初年度にサンプリングした稲わらを用いて、稲わら乾物重、澱粉・可溶性糖濃度の測定をおこなった。さらに稲わらから澱粉粒を精製し、アミロース含量の測定をおこなった。稲わら乾物重や澱粉・可溶性糖濃度には系統間に差異が認められた。一方でアミロース含量には明確な差は認められず、稲わら乾物重や澱粉・可溶性糖濃度との間に相関は認められなかった。イネ茎部では澱粉粒結合型澱粉合成酵素(GBSS)IIがアミロース合成を担っている。日本晴型のGBSSIIハプロタイプをジャポニカ型、ジャポニカ型に対し11個のアミノ酸置換があるGBSSIIハプロタイプをインディカ型としてアミロース含量との関係を解析したところ、ハプロタイプ間に明確な違いは認められなかった。今後は再現性の確認を行うほか、澱粉粒の形態の観察や澱粉の物理化学的な性質の解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に遅れていた稲わらからの澱粉精製は進んだものの、2年次で計画していた栽培試験とサンプリングが大雨による水田の冠水で行えなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
3年次は2年次に行えなかった栽培試験とサンプリングを行い、再現性の確認のため稲わら乾物重や澱粉・可溶性糖濃度の測定、澱粉粒の精製などを行う。また初年度のサンプルから精製した澱粉の走査型電子顕微鏡を用いた観察や糊化温度の解析も行う。また各澱粉生合成関連酵素のハプロタイプの澱粉の性質に関して、詳細に解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた栽培試験ができなかったため、栽培試験に必要な物品の購入に用いる
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