2023 Fiscal Year Research-status Report
Actinidia属野生種を扱った陸上植物の耐水性メカニズムの解析研究
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22K14886
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
大野 健太朗 香川大学, 農学部, 助教 (10910896)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マタタビ属 / ストレス耐性 / 耐水性 / 野生種 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の気候変動の影響により作物の湛水被害が発生している.多様な作物の湛水リスクに備えるために,各作物種における耐水性メカニズムを明らかにする必要がある.特に果樹作物は,果実生産が可能となるまでの生育に年月を要する特徴から,植物体の枯死による実害が特に大きい作物である.キウイフルーツは果樹作物の中でも湛水に弱い種の一つであるが,同じマタタビ属(Actinidia属)の中でも栽培種と比較的早期に分岐した野生種のA. valvataおよびA. macrospermaは,マタタビ属の他種と比べて顕著に耐水性が強く,長期間の湛水条件でも良好に生育を続けることが近年示された.本研究では,A. valvataおよびA. macrospermaの耐水性メカニズムの解明を目的とした. A. valvataの耐水性について遺伝子発現レベルで調査した報告から,A. macrospermaおよびA. valvataは湛水による低酸素環境を回避する特性を有するよりも,むしろ低酸素等のストレスを受けた状況下で生存する能力が高いと仮説を立てた.仮説の検証のために,A. macrospermaと栽培種を乾燥環境,塩処理条件下,および還元鉄過剰環境で栽培して生育を評価したところ,A. macrospermaはこれらのストレスに対して顕著な耐性を示したため,ストレスを受けた状況下で生存する能力が高いことが確認された.特に,湛水環境では土壌が低酸素により還元状態となり,還元鉄等の物質が植物のストレスとなるとされる.本実験では,湛水により発生する土壌中の還元鉄への耐性が,A. macrospermaの耐水性の少なくとも一部を説明することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マタタビ属内でA. macrospermaが顕著な耐水性を示す要因の一部として,湛水により土壌で発生すると考えられる還元鉄への耐性が関与していることを確認した.また,乾燥や塩処理条件下でも,栽培種と比較してストレス環境下での生存能力が高いことを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では,マタタビ属では耐水性種と通常の栽培種ともに,湛水により通気組織が形成されて地下部へ酸素が供給される様子が観察されており,通気組織の形成はA. macrospermaの耐水性の主要因ではないと考えられていた.しかし通気組織の形成タイミングについての調査が不十分であるため,次年度に予定している.また,空気を根端まで届ける途中で根から植物体外に抜けることを防ぐためのバリア物質の蓄積についても解析予定である.
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Causes of Carryover |
今年度の使用額は概ね予定通りであった。最終年度に購入の必要な物品が多く発生する予定で昨年度に出費を抑えた分が、今年度の残額として生じた.残額は翌年度分に合算して,物品と成果発表旅費に使用する.
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