2022 Fiscal Year Research-status Report
バラ科果樹の雑種化に伴う形質改変の機構解明とその育種利用
Project/Area Number |
22K14887
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
森本 拓也 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (90837634)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遠縁交雑 / バラ科果樹 / トランスクリプトーム / 香気成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの雑種研究は,交雑障壁の機構やその打破を中心として,どのように新規雑種を獲得するかに焦点が当てられてきた.申請者はこれまでにバラ科果樹の遠縁交雑親和性を網羅的に解析しており,雑種形成の可否を制御する機構解明と新規雑種の作出を行ってきた.本研究では,雑種形成後に生じうる形質やゲノム,発現遺伝子の変化を理解することで,雑種個体の農学的利用に貢献する知見を得ることを目的として,バラ科果樹で作出された種間・属間雑種の解析に取り組んでいる. 2022年度はナシ属の種間雑種(セイヨウナシ×ニホンナシ)を中心として,成熟果実の特性評価(果実形質,品質)およびトランスクリプトーム解析を実施した.親品種と比較した際に雑種個体で特異的に検出される香気成分や含量が多い成分を同定した.一方で,雑種個体で発現変動する遺伝子を探索したところ,異なる遺伝的背景を持つ雑種系統間で共通して発現変動する遺伝子を複数同定した.このことから,雑種化に反応する共通遺伝子の存在が示唆された.また追熟の有無によっても雑種個体と親種の間で特徴的な発現傾向が認められたことから,果実を対象とした解析の独自性が示された.次年度からはホメオロガス遺伝子の発現解析やゲノム解析を実施予定である. さらに,リンゴとナシの属間雑種の作出に成功しており,より遠縁の雑種個体における内的環境の変化とその育種利用についても調査を行う体制を整えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナシ属の種間雑種を中心として,雑種化に伴う形質や発現遺伝子の変化の理解に向けた進展がみられ,これまでにモデル植物でも知見が乏しかった研究分野の解析環境の基盤ができた.多様な雑種系統を用いた解析に継続して取り組むことで,本研究のゴールである遠縁交雑による内的環境の変化の解明と育種利用に繋がる知見が得られると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトームデータのうち,異なる親由来の対立遺伝子を区別して発現解析を行うことで,雑種化による内的環境の変化をより詳細に解析する予定である. また,今年度の成果の一つとして,リンゴとナシの属間雑種の育成を交配ベースで行うことに成功しており,次年度からはオリジナルの材料を核として生育特性やゲノム,発現遺伝子の多様性と遠縁交雑との関連性を解析する計画である.
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Causes of Carryover |
2022年度に計画していた一部のトランスクリプトーム解析について,材料の整備状況等を踏まえて,該当内容を2023年度に実施することとしたため、一部費用を繰り越した.2023年度予算はトランスクリプトーム解析および消耗品目として使用する計画である.
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