2022 Fiscal Year Research-status Report
広範な病害抵抗性開発に向けたER-細胞膜接着部位と細菌の相互作用機構の解明
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22K14892
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石川 一也 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10791642)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植物病原細菌 / ER-細胞膜接着部位 / 病害抵抗性 / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ER-細胞膜接着部位はウイルスやカビが植物に感染する際に利用することが知られている、細胞内ドメインである。本研究の目的は、広範な病原体に対する植物抵抗性の確立のために、ER-細胞膜接着部位を介して感染する細菌種を調査し、ER-細胞膜接着部位を介した細菌感染の分子メカニズムを明らかにすることである。 ER-細胞膜接着部位を介して感染する細菌種を調査するために、植物病原細菌であるトマト斑葉細菌病Pseudomonas syringae pv. tomato 、アブラナ科軟腐病菌Pectobacterium odoriferum、コントロールとして大腸菌 Escherichia coli BW25113を、シロイヌナズナの野生型とER-細胞膜接着部位欠損変異体に接種した。その結果、予想に反して野生型と変異体で病徴や生菌数に差は見出されなかった。このことから、これらの植物病原細菌については、感染にER-細胞膜接着部位を利用していないことが示唆された。一方で、大腸菌 BW25113を接種した際に、少なくとも接種7日後まで、シロイヌナズナ上で生菌数が維持されることが明らかになった。このことから大腸菌は、植物上で生菌が維持される仕組みを有していることが示唆された。植物の病原細菌ではない大腸菌が有している植物適応システムは、細菌が普遍的に有している仕組みであると考えられた。この仕組みを理解することで、広範な植物病原細菌に対する抵抗性の構築に資することができると考え、大腸菌の植物環境の適応に必要な遺伝子についても併せて現在解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
植物病原細菌をシロイヌナズナの野生型とER-細胞膜接着部位欠損変異体に接種したが、想定とは異なり、病徴や生菌数に差は見出されなかった。そのため、計画を変更し、異なる細菌の接種と、大腸菌の植物環境適応に関わる遺伝子の解析を並行して行なっている。以上のことから、当初の研究計画からはやや遅れている状況と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
P. syringae pv. tomato 、P. odoriferumについては、シロイヌナズナの野生型とER-細胞膜接着部位欠損変異体に対して、病徴や生菌数について差が見出されなかったため、そのほかの細菌種について試行を行う予定である。 そのほかの細菌種についても差が見出されなかった時のために、大腸菌の植物環境適応に関わる遺伝子の探索を進めている。変異原処理を行なった大腸菌をシロイヌナズナに繰り返し接種することで、植物に適応した大腸菌の選抜を行なっており、シロイヌナズナでの生菌数が上昇した複数の変異大腸菌が得られている。今後はこれらの変異大腸菌について遺伝子解析を進め、大腸菌の植物環境適応に関わる遺伝子とその機能について解析を行う予定である。
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