2022 Fiscal Year Research-status Report
植物病原菌の病原性に関与するプログラム細胞死機構の解明
Project/Area Number |
22K14895
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
住田 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (90881136)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 植物病原菌 / 宿主侵入 / 付着器 / ユビキチン / 選択的タンパク質分解 / プログラム細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネいもち病菌やウリ類炭疽病菌では、植物への侵入器官である付着器が胞子から分化した後、胞子で内容物の分解およびプログラム細胞死(PCD)が起きる。この過程は侵入成立に重要とされる。報告者はウリ類炭疽病菌において、タンパク質をユビキチンで修飾し分解に導くユビキチンリガーゼ関連遺伝子CoGRR1の破壊株が、胞子に続き付着器においても細胞死を引き起こし、病原性を失うことを見出した。そこで本研究では、このような感染過程に特異的なPCDがタンパク質分解を通じてどのように制御され,どのような分子メカニズムによって実行されるのかという疑問の解明を目指している。具体的には、1)PCDに関連してCoGRR1を介して分解されるタンパク質の同定、2)PCDの制御・実行プロセスに関わる新規因子の同定、3)感染過程におけるPCDの特徴づけ、4)イネいもち病菌におけるGRR1ホモログの機能の解明、を行う。 本年度は、1)について、酵母ツーハイブリッド法による分解基質の探索に用いるウリ類炭疽病菌のcDNAライブラリーの構築を行った。2)について、ウリ類炭疽病菌の野生株とCoGRR1破壊株の付着器分化後の遺伝子発現を比較するため、シャーレ上で付着器を形成させた菌体からRNAを抽出し、外部委託によるRNA-Seqに供した。3)については、野生株胞子およびCoGRR1破壊株付着器のPCDについてフェロトーシス阻害剤による影響を調査した。現在までに明確なPCD阻害効果は認められていない。4)について、イネいもち病菌MoGRR1の破壊株を作出した。解析可能な程度の胞子形成が認められたため、付着器の機能に焦点を当てた解析を実施している。破壊株では付着器侵入能力が低下する傾向が認められており、生存性について調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各項目とも一定の進捗が得られており、次年度の解析をおおむね計画通り実施できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の各項目について下記の解析を進めていく。 (1)本年度構築したウリ類炭疽病菌のcDNAライブラリーを用いてCoGRR1と相互作用するタンパク質の同定を行う。同定したタンパク質について,破壊株における機能欠損や野生株における過剰発現等の手法を用いて付着器におけるPCDへの関与を調査し,必要に応じて蛍光タンパク質による標識やウエスタンブロット等を行い、感染過程における挙動を明らかにする。(2)RNA-Seqデータの解析を行い、野生株とCoGRR1破壊株の付着器分化後の遺伝子発現を比較して発現レベルの異なる遺伝子をリストアップする。同定した遺伝子産物の特性に応じた解析を行う。(3) 野生株胞子およびCoGRR1破壊株付着器のPCDについて、アポトーシス検出試薬等を用いた特徴づけを行う。(4) イネいもち病菌MoGRR1の破壊株の付着器の生存性を調査し、付着器における機能の解析を進める。
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Causes of Carryover |
RNA-Seq解析用のサンプリングが難航し、年度内に予定していた外部委託先へのサンプル提出が4月初旬にずれこんだため、次年度使用が生じた。現在、すでにデータを受領しており、今後はデータの解析を進めていく。次年度は計画に従って必要な物品を購入し、発表を行う。
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