2022 Fiscal Year Research-status Report
タバコモザイクウイルスゲノムの5′末端領域による翻訳制御機構の解析
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22K14896
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
吉田 哲也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (00809874)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 植物ウイルス / タバコモザイクウイルス / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物プラス鎖RNAウイルスの一種であるタバコモザイクウイルス(TMV)のゲノムの5′末端領域は翻訳のエンハンサーとして働くことが報告されているが、当該領域による翻訳制御の分子機構の詳細は明らかとなっていない。 これまでに、TMVゲノムRNAの5′末端領域内の様々な配列を持ついくつかの短鎖RNA断片が試験管内系におけるRNAの翻訳をトランスに阻害することを見出していた。このことから、翻訳阻害活性を持つ短鎖RNA断片に相当する配列が、TMVゲノム上で翻訳制御に重要な役割を果たす可能性が考えられた。 そこで、様々な変異を導入した短鎖RNA断片バリアントの翻訳阻害活性を調べたところ、一部のバリアントで翻訳阻害活性が低下した。また、これまで見出した翻訳阻害活性を持つ短鎖RNA断片はいずれもTMV複製タンパク質の開始コドンを含むことから、短鎖RNA断片内の開始コドン部分に変異を導入したところ、翻訳阻害活性が大きく低下した。このことから、短鎖RNA断片による翻訳阻害には複数の配列部分が関わるが、中でも開始コドン部分が予想外に大きな役割を果たすことが明らかとなった。続いて、TMVとは無関係な複数のRNAの5′末端領域に由来し、開始コドン部分を含む短鎖RNA断片を用いて同様の解析を行った。その結果、いずれも翻訳阻害活性を持つこと、その活性は開始コドンへの変異導入で大きく低下することが明らかとなった。以上から、本解析系において、短鎖RNA断片がトランスに翻訳を阻害する活性には、予想外に開始コドン配列が重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験管内系における短鎖RNA断片による翻訳阻害活性には、開始コドン部分が大きく寄与するという予想外の結果が得られたものの、当初予定していた様々な短鎖RNA断片バリアントによる翻訳阻害活性の試験を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで用いてきた解析系では、短鎖RNA断片内の開始コドン部分が翻訳阻害活性に大きく寄与することが予想外に明らかとなったことから、これ以外の実験系を用いた解析も試みる。また、TMVゲノムRNAの5′末端領域は、翻訳だけでなく複製においても重要な役割を果たすことから、当該領域と複製の関わりについても解析を試みる。
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Causes of Carryover |
短鎖RNA断片を用いた翻訳阻害活性試験の結果により、実験内容の一部に変更が生じたため。次年度は、新たに実施予定の生化学実験等に使用する。
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