2022 Fiscal Year Research-status Report
寄生バチの寄主以外での繁殖を可能とするハイジャック寄生現象の解明
Project/Area Number |
22K14897
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藏滿 司夢 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10826986)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | multiparasitism / 共寄生 / 非寄主 / コマユバチ科 / クサシロキヨトウ / 寄主適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生バチ類は種ごとに寄主範囲が限られる。一部の内部寄生バチにおいては、非寄主昆虫に対してもそれ由来の化学物質に誘引されたり、出会った際に産卵したりすることが報告されている。通常、非寄主昆虫の体内に産卵された子は寄主免疫を克服できず、死亡する。ところが、本課題の予備試験において、寄生バチの一種であるカリヤコマユバチは非寄主昆虫(クサシロキヨトウ)であっても、それを寄主とする他種の寄生バチ(ギンケハラボソコマユバチ)と同時に寄生することで、”非寄主”での繁殖が可能になるという現象が発見された。この繁殖様式の名称を便宜的にハイジャック寄生とする。本研究では、野外におけるハイジャック寄生の実態を調査するとともに、生理的メカニズムの解明を目指す。 初年度となる2022年度は、予備試験においてペトリディッシュ内での半強制的な産卵条件によってのみ確認されていたハイジャック寄生について、①飼育ケージ内における自由産卵実験、②野外におけるクサシロキヨトウの捕食寄生者相調査、を行い、ハイジャック寄生が野外で生じている可能性を検証した。 飼育ケージ内における自由産卵実験では、ケージ内にトウモロコシ株とクサシロキヨトウ幼虫、カリヤコマユバチおよびギンケハラボソコマユバチの雌成虫を導入し、一定時間自由に産卵させた。その後クサシロキヨトウ幼虫を回収し、人工飼料を与えて飼育して、出てくる寄生バチの種類を確認した。その結果、一定の割合で、クサシロキヨトウ幼虫からカリヤコマユバチが脱出してきた。このことから、自由に産卵できる条件下でもハイジャック寄生が生じることが明らかとなった。次に、国内外のイネ科草原6箇所にてクサシロキヨトウ幼虫を採集し、捕食寄生者相を調べた。その結果、ごく少数ではあるがカリヤコマユバチの羽化が確認された、これらの結果から、ハイジャック寄生が自然環境かで生じている可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り進行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、2023年度はハイジャック寄生の生理メカニズムの解明および普遍性の検証を行う予定である。
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