2023 Fiscal Year Annual Research Report
微生物生態系における自己組織化と機能の安定化機構の解明
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22K14906
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 研志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (80870188)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 個体群内不均一性 / 代謝ネットワーク / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物群が自己組織化し生態系として機能を安定に発揮するまでの過程を解析することを目的とした。まず、Comamonas thiooxydans R2株を用いて個体群内に生じる不均質さがもたらす影響を解析した。フェノールを唯一の炭素源としてR2株を連続培養し、1細胞レベルでの増殖活性を評価した結果、様々な増殖速度および最終増殖量を示す細胞が混在することが明らかとなった。つまり、R2株個体群内にはフェノールを分解する以外にも、自身の代謝物を利用して増殖する細胞が生息することが示唆された。そこで、R2株が生産し自身で再利用する代謝物を解析した結果、少なくとも51種の代謝物を利用することが示された。それらの代謝物がR2株に与える影響を解析するため、培養上清を分画しR2株に与えた結果、増殖抑制や促進をする代謝物が含まれることが明らかとなった。しかも、増殖抑制を示した分画はR2株のphenol hydroxylaseの活性を直接低下させていることが明らかとなっていた。つまり、R2株個体群内ではこれらの代謝物により、個々の細胞の代謝が変化し様々な形質の細胞が生じていることが考えられた。また、細胞間で代謝のネットワークを構築することで機能的に分化しフェノール分解という機能を維持していることが示唆された。個体群あるいは複合微生物群における代謝ネットワークを解析するため、蛍光タンパク質によるフェノール代謝の可視化および集団内における代謝物変化を解析した。その結果、フェノール代謝により蛍光を示す微生物の作出に成功し、フェノール代謝条件下でも蛍光を示す細胞と示さない細胞が混在することを示した。また、微生物種の組み合わせを変更することで細胞外に放出される代謝物が変化したことから、共存する相手に応じた代謝ネットワークが形成されていることが示唆された。
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