2022 Fiscal Year Research-status Report
Forest canopy ecology study focusing on epiphytic plant communities on large old trees
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22K14919
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
東 若菜 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20780761)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 着生植物 / 林冠 / 地衣類 / 蘚苔類 / 巨樹 / 土壌 / 微生物群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
着生植物は森林生態系の種多様性に寄与する重要な存在であり、長い年月をかけて生存し続けてきた巨樹との関係性が深い。本研究の目的は、林冠という限られた空間に生育する着生植物群集の成立要因とその生態学的役割を明らかにすることである。具体的には、①巨樹上の林冠土壌に着目して、着生植物が利用可能な養分がどのように、どの程度供給されるかについて明らかにすることで、維管束着生植物群集の成立要因を理解すること、②森林内における非維管束隠花植物の分布特性および生態系プロセスへの影響を明らかにすること、である。 目的①については、屋久島のスギ巨樹上の着生維管束植物の着生基質となっている林冠土壌(リター堆積物の腐植)ついて、着生植物への養分可給性に着目して、ヤクスギの林床の土壌と比較して調べた。その結果、林冠土壌の土壌重量あたりの無機態窒素濃度は地上と同程度であった一方、土壌体積あたりでは地上よりも低かった。また、窒素生成にかかわる真菌類や細菌類の群集組成や機能群は、林冠と地上とで異なっており、土壌の物理化学特性の影響を反映していた。 目的②については、非維管束隠花植物が多数みられる京都大学芦生研究林において、冬から春先にかけて林内で倒伏したサイズや種の異なる樹木を対象に、1個体に着生していた全ての蘚苔類について採集することによるバイオマス調査をおこなった。現在、採集した蘚苔類から樹皮や残渣を選別する作業をおこなっている。また、樹幹着生性の地衣類や蘚苔類のリター分解特性について調べた結果、蘚苔類や地衣類は維管束植物に比べて、特に分解初期の数か月間にリターの重量減少の割合が小さく、森林生態系内の物質循環の速度に影響することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は申請時から研究遂行に必要な調査地の選定や研究協力者との相談をおこなっていたことにより、スムーズに研究を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた成果については学会で発表するとともに、学術誌へ投稿する準備を進める。 また、ヤクスギにおける林冠土壌の調査では、今後は着生している植物種とその土壌の物理化学特性や微生物群集との関連性についてより詳しく解析を進める予定である。さらに、蘚苔類や地衣類といった着生植物の、物質循環や地上部バイオマスといった生態系プロセスへの寄与について、引き続き調査を続けていく。
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Causes of Carryover |
微生物群集の分子生物学実験にともなう物品費を計上していたが、サンプル調整に試行錯誤が必要となり計画よりも遅れたことで、次年度に実験をすることに変更した。
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Research Products
(5 results)