2023 Fiscal Year Research-status Report
事故後10年経過した森林における放射性セシウム循環の動的平衡状態に関する研究
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22K14924
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
坂下 渉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10867625)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 森林 / 動的平衡状態 / 安定同位体セシウム / 福島第一原子力発電所事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発事故から10年以上経過した現在、直接汚染された落葉広葉樹の137Cs循環が動的な平衡状態に達しているのか否かを評価するため、2022年9~10月に福島県川内村の三ツ石落葉広葉樹林の調査プロット内の優占樹種であるクリ・ミズナラ・コナラ・ヤマザクラの4樹種から樹幹流を採取し、その137Cs濃度と133Cs濃度の関係性を調べた。その結果、137Cs濃度と133Cs濃度の間には有意な正相関関係があり(r = 0.93, p < 0.001, N=9)、その回帰係数(濃度比)は0.0158 Bq/(L×ppt)であることが分かった。これは、当該調査範囲内であれば、137Csと133Csの濃度比の樹種間差が小さいことを示唆しており、落葉広葉樹の137Cs循環が動的な平衡状態に達しているのか否かの判定にこの知見が役立つ。福島県川内村のヒノキ林においては、2023年9~10月に葉・樹皮・幹材と樹冠通過雨・樹幹流を採取した。現在、それらの137Cs濃度測定を進めている。 また、137Cs循環が動的な平衡状態に近づいていると考えられる2022-2023年現在、落葉広葉樹の樹幹流の137Cs濃度が葉と外樹皮のどちらからの寄与が主となっているかを明らかにするため、その関係性について調べた。その結果、外樹皮ではみられなかった正相関関係が葉と樹幹流の137Cs濃度の間にあり、葉からの寄与が主であることが明らかになった。また、葉から樹幹流の137Cs濃度推定ができることも分かり、これはモデルによる幹材の137Cs濃度推定の際のパラメータ決定に貢献できる。当該研究成果は、査読付き国際誌に論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに研究を進め、福島県川内村の三ツ石落葉広葉樹林調査地及び三ツ石ヒノキ林調査地から、予定していた試料を採取することができた。137Cs濃度測定はおおむね順調に進んでおり、133Cs濃度測定についても、想定通りのスピードで進んでいる。また、現時点で査読付き論文および国内学会での発表といった成果も得られていることから、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
福島県川内村のヒノキ林において、追加のサンプリングを行う。そして、福島県川内村の落葉広葉樹林及びヒノキ林ですでに採取された試料も含め、137Cs濃度と133Cs濃度の測定を行い、その濃度比が一様か否かの評価を行う。そして、原発事故から10年以上経過した現在、直接汚染された成木の137Cs循環が動的な平衡状態に達しているのか否かを評価する。
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Causes of Carryover |
次年度6月にスウェーデンのストックホルムで開催されるIUFRO2024に参加し、当該研究課題で得られた研究成果の発表を行うためには、高額な旅費がかかると想定されたため、次年度使用額が生じた。当該資金は、上記国際学会への参加旅費として主に使用する予定である。
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