2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K14925
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小川 敬多 静岡大学, 農学部, 助教 (10805021)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 木質接合部 / 木材改質 / せん断 / ボルト |
Outline of Annual Research Achievements |
木質構造物の中大規模化に社会的関心が高まる昨今,高耐力性能の木質接合部の開発は大きな関心事である。本研究では,木材細胞内への樹脂含浸技術を応用し,高耐力接合部の実現を目指している。過去に行った実験では,ボルト穴の周りに樹脂を含浸すると,初期剛性などの特性値は増加するが,脆性的な破壊を示した。今年度はこの脆性的挙動に着目し,これがより顕著に現れると考えられる条件として,ボルト穴と縁距離との関係を調べることとした。 幅120mm,厚さ60mmの断面寸法のスギ材を用意した。なお,ここでの厚さ方向がボルトの差し込み方向と一致している。このスギ材を供試材料として,端距離(木口面からの距離)がボルト径の2,3,4,5,7,9倍となるところにボルト穴を設けた。なお,今回の実験ではボルト径は16mmとした。6条件の端距離に加え,樹脂含浸の有無の2条件,計12条件で鋼板添え板ボルト接合のせん断試験を実施した。 樹脂含浸しなかった試験体では,端距離は2~4倍の時には脆性的な破壊を示したものの,5倍の時から靭性的な挙動を示す試験体が現れ,7倍と9倍の時には靭性的な挙動を示す試験体を多く見られた。樹脂含浸した試験体では,たとえ端距離がボルト径の5倍であっても全ての試験体で脆性的な破壊を示したまた,脆性的な挙動はテトマイヤ係数を求めることで顕著に示された。樹脂含浸なしの条件では,端距離はボルト径の5倍になるとテトマイヤ係数はおおよそ0.8程度になり,端距離が7倍や9倍とほぼ同等の値となった(すなわち,5倍で頭打ち)。それに対し,樹脂含浸した試験体では端距離がボルト径の5倍の時は0.57,7倍の時は0.72,9倍では0.79となり,頭打ちの傾向は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに当該研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
樹脂含浸による高耐力接合部の開発は,いまだに未解明な点が多い。今年度の脆性さの検討においても,実験ができたのは限られた寸法条件であるため,今後は試験データの充実が必要である。 また,含浸する樹脂についてもさらなる検討が必要である。最近に調べたところ,今回使用した樹脂はガラス転移温度が室温よりもはるかに高いものであった。脆性さに及ぼす影響としてはガラス転移温度も要因として大いに考えられることから,これを解明するための実験が重要になる。 加えて,実大スケールへの接合部への展開も今後に予定している。
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Causes of Carryover |
52634円が次年度に繰り越された理由としては,試験体加工がスムーズに進行し,加工要するうな経費が削減できたためである。この経費は,翌年度の実験に充てることを予定しており,具体的には,より簡便で高精度の試験データを収集するための治具の改良を予定している。
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